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- 拾弐 -
若侍を斬る時に浴びた返り血に染まった細い指を唇でなぞる。生臭い鉄の味が弥兵衛の舌に絡みつく。
「あんたも俺も今に地獄に堕ちるよ」
くつくつと耳元で笑うその声もまた艶やかで心惹かれる。
――このまま平凡な毎日を送るよりずっといい。
弥兵衛はしなやかな下肢を静かに広げると、すっかり昂ぶっている一物を秘められた蕾の中に埋めていく。
いっそうの甘い声が浅治郎から響いた。
弥兵衛は、これは自分の物だと言わんばかりに冷たくなった屍の前で固く反り上がった楔の抜き差しを繰り返す。
華奢な腰を打ちつける度に響く肉音が心地好い。
弥兵衛は薄闇の中、浅治郎の耳元で笑みを浮かべ、貪り続ける。
- 完 -
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