3 / 8
第3話
「は!?じゃあキスもまだかよ!?」
「ちょっと!誠 !声大きい!」
僕の唯一先輩との関係を知っている友人、誠。
周りに聞かれてないか見回す僕を、信じられないといった表情で彼は見た。
「結構可愛い先輩だろ?キスとか色々したくなんねぇの」
「そういうこと言うなって」
「じゃあ先輩から何かされてねぇの?」
「ハグとか手繋ぐとか…その程度」
自分でも恥ずかしくて消えそうな声で言った自覚はある。でも親友はそれをわかっていながら僕に冷たく言った。
「それほんとに付き合ってる?」
「たぶん.....」
「お前が嫌じゃないんだったら一回キスくらいしてみれば?だって付き合い始めてからもうすぐ2ヶ月だろ。さすがにもうキスしていいんじゃね」
そんな親友との昼間の会話を思い出し、ため息をついた。
「晶くん?」
「あっ先輩.....」
「あれ?もうみんな帰ったよ?自主練するなら先生に言わないと」
無意識に先輩の唇を見つめている自分に気づき、つい先輩から視線をずらしてしまった。
「晶くん.....?」
「あっ、もう帰ります!すいません!今片付けるんで!」
楽器入れを閉じると準備室に入りしまう。
出てくると先輩は音楽室の鍵を持ったまま、待っていた。
「遅くなっちゃってすいません.....」
「ねぇ晶くん」
「えっわっ!」
カバンに楽譜を手早く詰め込み先輩の方を向いた途端、先輩の顔がどアップで視界に入る。
半径2センチだ。
思わず後ずさりした僕は椅子の足に引っかかり後ろへ倒れる。
「先輩!?」
「晶くん!ぶつけてない!?大丈夫?」
「先輩こそ大丈夫ですか?」
先輩は僕を庇 おうとしてくれたみたいで、かなり体が密着した状態で僕たちは抱きしめ合う。
「...っ」
抱きしめ合った瞬間、いつもは背中に回される手が今日は肩に。
咄嗟に先輩の肩を掴み、引き離した。
「晶くん.....俺のこと嫌になっちゃった?」
ともだちにシェアしよう!