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【SS】忙しい

2018/07/21 ・家族写真 ・扇風機 ・驚いた顔 制作時間30分 久々に一本勝負チャレンジしました。 「な、家族写真見せて」 「見せねえわ」 食い気味の即答。 「いいじゃん、別に奥さん刺したりしねーし」 「…お前な」 苦々しく言い捨てると、吸っていたタバコを灰皿に押し付けて火を消し、立ち上がる。 事後の香りを孕んだ狭い部屋には、湿気が重々しくのしかかる。 一足先にベッドから出て扇風機の前に陣取っているミヤビに近づいていった。 「なんでそんなこと急に、ってか呑気にアイス食ってんじゃねえよ」 そんな重苦しい要求をしながら、ミヤビはアイスバーを頬張っていた。 「んー?だって知りたいじゃん、マサキが好きになって結婚した人がどんな人なのか」 扇風機に向かって話し続けるミヤビ。 アイスからは今にもしずくが滴り落ちる寸前だ。 「扇風機の方向いてアイス食うバカがいるか、溶けてきてんだろ」 マサキがミヤビの肩を引いてこちらに向かせようとするが、力を入れて拒否する構え。 「おい」 無理やり力ずくで振り向かせると。 「風に当たってて乾燥しただけだからな!あ、ほら、アイスと一緒で」 マサキは驚いた顔をしつつも、どこが一緒なんだと内心突っ込んでいたが、口には出さずにおいた。 その代わり、横に並んできつく肩を抱き寄せ、ミヤビが持っている食べかけのアイスをかじった。 「あー!」 頬に涙をつたわせ、笑いながら、アイスを横取りされたことに怒る愛人。 …忙しいヤツだな。 マサキの目が少しだけ細くなった。

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