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それはまるで夢のような 1
もうすぐ世間はお盆休み。
飲食店勤務の俺には関係ないけど。
…あ、関係なくもないか。
「お盆あっち帰んの」
こないだきいたら、やっぱり帰るって言ってた。
そりゃーそうだよな、愛する妻子と離れて暮らしてるのがおかしいんだもんな。普通飛んで帰るよな。
俺は一回り以上年上の、既婚者のおっさんとセフレのような、愛人のような関係にある。出会ったのは東京だけど、おっさんの単身赴任にくっついて、勢いで大阪まで来てしまった。
なのでおっさんはお盆休みになると当然、妻子が待つ自分の家に帰る。
俺は…
別に、どこにも用はない。
おっさんは確か、11日から休みって言ってたな。カレンダーからするに、一週間ぐらい戻ってこないんだろうか。
さみs…暇だな。
え。
11って明日じゃん。
何のお別れもなく帰って行くのかぁ…
当日俺はフツーに仕事。
もう新幹線乗ってる頃かなあ。
もう家族と合流したのかな。
そんなことばっかり考えていた。
19時になり、タイムカード切ってスマホを見たら
『店の前で待ってる』
って。
あまりのことに、誰からのかわかんなかった。
えっ、マサキ?
あ、マサキっておっさんの名前ね。
おっさんのくせに『真咲』なんて綺麗な字書くんだけど。
それはさておき、店の前で待ってるって何のこと?誰かに送り間違えた?
考えるより先に走り出す。
カフェの制服のままで。
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