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ザッハトルテと馬の蹄 1
・デートの下準備
・クリスマス
・「絶対無理だと思ってた」
のうち今回はクリスマスしか使えませんでした。気持ち的には、今夜会えるなんて絶対無理だと思ってた…なんですが、うまく組み込めず。
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あのオッサン、この三連休てっきり自宅へ帰ると思っていたら、どうせ一週間後に帰るからと、こっちにいることにしたんだと。
ぜんっぜん期待してなかったのに、クリスマス一緒に過ごせるフラグなのか…?
い、いや、そうとは限らねーし。こっちにいるからって一緒に過ごせるとは限らねーし!
…でも、勤め先のカフェで出すための練習ためにという口実で、実は寂しいひとりクリスマスのためにまさしく今作ってるザッハトルテは、もしかしたら二人で食べられたり…しないかなあ。
一人の休みって、何してるんだろうあのオッサンは。考えてみたら、趣味とかなんにも知らねーのな。
ザッハトルテ作ってはいるものの、いい天気すぎてどっか出かけたくなる。今日は比較的あったかいし。だからホワイトクリスマスって訳には行かなさそうだけど。
はぁ。
でも出かけたらきっとカップルがうじゃうじゃしててリア充爆発しろとか思いそうだから、やっぱり家で大人しくお料理でもしとくか。こうなったらチキンも本格的に焼いてみようかな…
料理に没頭して、どれくらい経っていただろう。
ガチャガチャ
鍵を開ける音がして、ドアノブが捻られる音、そして。
「マサキ?!」
さっきからオッサンオッサン言ってる男、マサキご本人が突然のご登場。まあいつも登場は突然なんだけど。
休日真昼間から来るなんて、珍しいな。
「こんな日に一人で引きこもりかよ」
片眉をあげて俺の方をチラッと見ると、ずかずかとまるで自分の家みたいに遠慮なく部屋に入って来た。
テーブルにはりんごジュースと醤油で漬け込んでオーブンで焼いた照り照りのローストチキン、ラム酒を効かせたピカピカツヤツヤのザッハトルテ。二品しかないけど、ひとつひとつはなかなかの出来だ。
「パーティーでもやんのか」
それは素朴な疑問なのか嫌味なのかわからなかったけど、他人事ちっくに言われてチクリと心が痛んだ気がしたけど気のせい。
「べ、別に。一人で食うんだよ」
俺は炊飯器からいつも使ってる茶碗にてんこ盛り白飯をよそった。チキンをおかずにフツーの晩飯だってんだ、悪いか。
「…腹減ってるなら、食う?」
マサキがあまりにボサッと突っ立ってるもんだから、こっちだって喉が詰まる。一応社交辞令として声をかけてやったら、とっとと向かいの椅子に座りやがった。食う気満々だ。
そうか、さては腹減ったから飯目当てにウチへ来たんだな?
いつもマサキが使ってる茶碗に、同じくてんこ盛り白飯をよそい、チキンも取り分けてやった。これだけでは幾ら何でも味気ないから、昨日の残りのポテサラとか店でちょっとずつ残ったタパスなんかを冷蔵庫から出して適当な器に盛った。
するとまあどうでしょう、なんだか素敵なクリスマスディナーみたいに見えて来たぞ!茶碗の飯以外。
マサキは相変わらず何も言わずに黙々と食ってる。スーツじゃないの、レアだな。セーター着てると肩幅の広さ強調されるよなあ。髪の毛もいつもみたいにがっちり固めてへんなツヤがなくて洗いざらしっぽい。
触りたいなあ
「食ってからだ」
え?今口から出ちゃってた?
いや、出てない出てない!
何こいつ宇宙人か超能力者?キモっ!こわっ!
ザッハトルテまで綺麗に喰らい尽くした。
二人で食うには結構な大きさだったんだけどな…二、三日かけて一人でちびちび楽しもうと思ってたことは、内緒にしといてやる。
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