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8-ごーごーらぶほ

「カズ君、Bランチおいしい? お父さんの魚フライとそっちのクリームコロッケ、取り替えっこしてくれる?」 第五日曜日は店が定休日の数也と由紀生は街へ来ていた。 特に目的は決めていない、インテリアを見たり服を見たり、穏やかな週末を気ままにのんびりぶらぶら。 裏通りにある喫茶店の窓際、二人はチェック柄のテーブルクロス上でランチをとっていた。 数也が言われた通りにナイフとフォークで魚フライとクリームコロッケを交換してやれば由紀生は嬉しそうに顔を輝かせた。 「ガキかよ」 数也にそう言われて由紀生は赤面した。 そうだね、本当、カズ君よりお父さんの方が子供みたい。 珍味とか食べれないし。 歯磨き粉も刺激が強いのは苦手だし。 「俺のミルクもいるか?」 カズ君みたいにブラックでコーヒー飲めないし。 「二つも入れるとか完全ミルクコーヒーだな」 「お父さん、これくらいがちょうどいい」 「朝にも俺のミルクやったんだけどな」 「え? あ!」 由紀生はさらに赤面した。 向かい側に座る数也は素知らぬ顔で食後のブラックコーヒーを嗜みながら赤面中の父に言う。 「俺、行きたいトコあんだよ」 「あ、そうなの? どこ?」 「行ってからのお楽しみ」 行きたいトコってどこだろう、何のお店だろう? 「カ、カズ君、ここって」 「見ての通り」 「や、やだ、恥ずかしい」 「ガキかよ。おら、立ち止まってる方が目立つだろーが」 何だかいかがわしい看板が目立つ裏路地を歩いていたかと思えば、生い茂る草木にうまい具合に翳っていたその出入り口へ強引に腕をとられて、導かれて。 由紀生、生まれて初めてラブホへGO。

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