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第31話
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ユキと出会ったのは8年前。ちょうどユキが10歳のころだった。
友人に半ば強制的に、いわゆる人身売買を行っている会場に連れてこられた。
人が人を売るなんて考えられないし、見たくもない。
人を買うヤツは頭がイカレてると思っていた。
ステージを見れば、幼い子から大人までの女性が白いボロボロの服を着せられ、逃げられないように足枷を付けられて立たされていた。
オークション形式で、より高いお金を出した人が買える。そう言うやり方だった。
次々とステージに立つ人が減っていく。
みな買われて行くのだ。
とうとうステージには1人だけが残された。
誰も彼を買おうとはしなかった。
何故なら彼は、薄汚く、1人だけ男だったから...
もともとこのオークションは女性中心で、みな女性目当てで来るのだ。
だから男なんて好き好んで買う人は1人も居なかった。
「なぁ...これ、買われなかったらどうなんの...?」
「たぶん、殺処分だろうな。売れないヤツは要らねーだろうし」
その言葉をきいて、息を飲んだ。
彼はまだ生きているのに...
今息ができて、動けて、自由になれる彼が殺される理由なんて何処にも見当たらない。
こんな事あっていい筈がない。
「オレ!買います!!」
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