24 / 24
第2話 - 15*
「ひっ、ぅ、うぅぅ……」
流される自分が悪いと重々分かっているが、あまりの無力さに涙が零れた。この年になって泣くなんて。それでも涙は次から次に零れ、僕の頬を濡らした。鈴木は泣きじゃくる僕を見て、一つ溜め息を吐く。
「なに泣いてんだよ」
「な、泣いて……ないしっ」
「……お前俺のこと好きなンじゃねーの?」
「……へ?」
「好きでもない奴にキスしようとするのかよ」
鈴木が唇を尖らせながら発したその言葉に、まざまざと屋上でのことを思い出した。確かに、僕はあれから今まで、あのキス未遂は先輩と鈴木を勘違いしたからだ、とは弁解していない。その後の行為のせいで忘れていたが、僕は鈴木に勘違いされても仕方ないだけのことをしていたのだ。
「あ、あれは……あの……」
「……」
すぐに否定しようとしたが、僕を真剣に見る鈴木の目は、彼こそ僕のことが好きなのではないかと勘違いさせるだけの力を持っていた。その真っ直ぐで、それでいて弱々しい視線に胸が締め付けられる。僕が流されてえっちなことを二回もしたくせに、今更勘違いなどと言えるのか。嫌なことを嫌だと言えない性格が本当に恨めしかった。
「……あの、えっちは、まだ怖くて……」
「は?」
鈴木を好きだと肯定せず、かつ否定もしない。もっと他にうまい言葉はあるだろうが、どんなに悩んでも今の僕にはこれ以上の答えを思いつくことは出来なかった。その答えに、鈴木がぽかんとした顔で僕を見る。
「あ、あの、初めては痛いって言うし……こ、怖いじゃん……」
「お前十分素質あると思うけど」
「ひゃ!」
畳み掛けるように言い訳を重ねる僕に、鈴木は後孔に宛てがう熱に体重を掛けたようだ。先端の方が僕の後孔を押し広げているのが判る。嫌だ、絶対に嫌だ。ぶんぶんと首を振ると、鈴木は溜め息を吐いた。
ともだちにシェアしよう!