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第3話
「……ところで門番、館の中でなにが起きているのか、お前は解っておるのか?」
「さあ。誰も教えてはくれませんし、女 とどうこうするなど、まったくわかりません」
「だろうな」
従者さんが笑うと、温かくなるのは何故だろう。
まあ、夜風の寒さを忘れさせてくれはしないのだけれども。
冷たい突風に思わず身震いすると、「車の中で話そう」と金糸銀糸の重厚な刺繍の扉を開け、するりと中へ誘い込まれた。
「大丈夫。主は朝まで起きはしない。おまえと話す時間が欲しくて、今日は道中車内で酒 を勧めておいたのだ」
最期の一粒となった金平糖を唇に挟み、従者は僕の肩に手を回すと、口移しで僕に白い突起を押し込んだ。知らなかった強烈な甘さを味わい、攻めるように刺激する突起を舐め取って鎮める。口の端から滴る蜜を親指で拭われ、絡んだ目線に堪らず赤面した。
手元で、すっかり空になった油紙がカサリと鳴った。
「高価な菓子を全部戴いてしまって…… これは、御礼をしなくては」
「そんな大袈裟な。礼には及ばぬ」
「いえ、そのままお帰ししたとあっては、当家が嗤い物になります」
目元が紅潮している自覚はある。
近付くと、従者はじりじりと下がる。狭い車中だ、なあにすぐに背に壁が当たる。
「女 の扱いは誰も教えてくれませんがね、御礼の仕方は存じております。
僕の目が良いと屋敷に迎え入れてくれた主人が、一から教えてくれましたから」
たじろぐ従者の袂 を開き、首元に口付ける。胸先を口に含み、金平糖の角に似た抗いを舌先で確かめた。
「噛まずに舐める方が長く楽しめるのですよね。僕、覚えました」
僕は他人より覚えが良いのだそうです。
<おしまい>
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