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第1話

「……別れましょう?」  壊れるのは一瞬だ。積み上げるまで、造り上げるまでの時間なんてものがまるでなかったことのように消え去ってしまう。  ただ一度の過ち、ただ一度の間違い。  ほんの僅かな猶予で下した決断が、クカの造り上げてきた全てを壊してしまった。  決断は引き金に過ぎなかったのかもしれない。  とうの昔に破綻していたのかもしれない。  だけども。  自信が築き上げてきた全てが、彼女の決意によって音を立てて崩壊してく様はどうにも受け入れがたかった。  一度壊れたものを再び元の通りに直すことは難しい。  ペトル・クカ。会社員。三二歳。  その日、クカは三二年かけて手にした理想の家庭を失った。  愛した妻、愛した娘、やっとの思いで手にしたマイホーム。  それら全てを失う恐怖。  真摯に自身を見つめ、震える唇で別れを告げる彼女を見て、頷かずにはいられなかった。

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