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5 個室 3★
吉川はベッドに横たわった俺の全身を、上から下までじっくりと眺めた。
「きれいだ……」
思わずといった感じでもれた吉川のつぶやきに、俺は照れながらも悪い気はしなかった。
「いつまでも見てないで、早く来いよ」
「はい」
俺の誘いに素直にうなずいた吉川は、俺の太もものあたりにまたがると俺の顔に手を伸ばした。
頬から始まって、首筋、肩、二の腕と、吉川の手は一つ一つを確かめるかのようにゆっくりと俺の体をたどっていく。
どうやら吉川は、ゲイにありがちな手っ取り早く快感を得られればいいというタイプではなく、ゆっくりと官能を高めていくタイプらしい。
それなら俺も。
そう思った俺は、ボタンが全開になった吉川のブラウスの隙間から手を入れ、その腹に触れる。
「……っ!」
一瞬息を詰めた吉川には構わず、腹筋の付き方を確認するようにその腹をなでていく。
あー、やっぱりすげえ好みだ。
吉川の腹は、いかにも鍛えたましたという感じではないが、それでもちゃんと腹筋が割れていてそれなりに固い。
それは俺がスーツ姿の吉川を見て、脱いだらこんな感じだったらいいなと想像していたのとほとんど同じで、好みの体に興奮した俺は、思う存分その腹を触りまくる。
「俺の腹、そんなにいいですか?」
欲情をにじませた低い声は、いつもの小さなぼそぼそした声とはまったく違う、下腹を直撃するような男っぽい声だ。
そんな声も、出せるんじゃねーか。
思わぬ吉川の色気にぞくぞくしながら、俺は吉川を見上げてにやっと笑う。
「ああ、すげー好き」
俺のストレートな返事に、吉川は赤くなりつつも口を開く。
「俺も……すごく好きです……藤本さんの体」
「そりゃよかった。
俺の体のどこが好き?」
「ど、どこって……それは全部……」
「全部かよ」
吉川の言葉に、俺はちょっと笑う。
「全部っていうくらいに好きなら、もっと触れよ。
まだまだ触ってないところ、たくさんあるだろ?」
言いながら俺は、吉川の手をとって自分の胸に導いた。
確かめるようにゆっくり触られるのも悪くはないが、いい加減そろそろ、もっと感じるところを触って欲しい。
吉川は小さく喉を鳴らすと、俺の乳首にそっと触れた。
そしてぷっくりと立ち上がったその粒をやはり確認するようにゆっくりと触ってから、両方の乳首を一度にきゅっとつまんだ。
「……ぁ…」
待ち望んだ刺激をようやく与えられ、俺は小さく声をもらす。
その声に煽られたように、吉川は俺の乳首をつまんだ指を動かしはじめる。
吉川に与えられる快感を堪能しながら、俺は吉川のスカートの中へとそっと手を伸ばした。
スカートに隠れされたソレを指先で確認すると、すでにしっかりと反応している。
ソレを包んでいる布の手触りはおそらくレースのもので、ブラとおそろいの女物だと想像できる。
あらためて根本の方から確認していくと、吉川のソレはかなり立派なものであることがわかった。
そんな大きなモノが女物の下着に収められるはずもなく、先っぽのカリの部分は完全にはみだしている。
そのはみ出しているところを指先でなでてみると、もうすでに先走りの汁でべとべとになっていた。
「ちょ、待って……、藤本さん、それ、やばいです…やめて……」
かなり焦った様子で、吉川が俺の腕をつかむ。
さっきまでの男っぽい色気はどこへやら、おろおろした表情で涙目になっている。
あ、かわいいかも。
普段職場で吉川がこんな表情になっている時は、同情はしつつも正直情けないとしか思わなかった。
それなのにこうして自分が触れることで引き出された同じような表情に対してはそんなふうに感じるなんて、なんだか不思議だ。
「やだよ。
触りたくて触ってるんだから、やめるはずないだろ。
やめさせたいんなら、俺がお前を触る余裕がなくなるくらい、俺のことを感じさせたら?」
そう挑発してやると、吉川の表情にまた男らしい色気が戻って来た。
「……わかりました。
ローションとゴム、取ってもらえますか」
「おう」
俺がヘッドボードに手を伸ばしてローションとゴムを取って渡してやると、吉川はローションを手のひらに出した。
俺の下半身へと伸びた吉川の手とクロスするようにして、俺もまた、吉川のスカートの中に手を入れる。
勃ち上がったモノと後ろの蕾とに触れる吉川の指を感じながら、吉川の下着を下げてその中身を直に握った。
さっきよりも心なしか大きくなっているソレの先っぽににじんだ先走りを全体に塗り広げると、ゆっくりと大きく手を動かしだす。
「ほらほら、急がっ、ないと暴発する、ぞ」
前と後ろを同時に刺激されて、俺も言葉が途切れがちになるくらいには感じているのだが、それでも吉川の方が切羽詰まっていると思う。
焦るように、吉川の手の動きが速くなる。
それでも前の触り方はむしろおざなりで、後ろを押し広げる指の動きの方が念入りだ。
そろそろ入れたいだろ?
早く来い。
そう念じつつ吉川を見上げると、通じたのか、吉川の手が止まった。
「……そろそろ、いいですか?」
「おう」
俺がうなずくと、吉川は急 いた様子で俺にずり下げられた自分の下着を脱ぐと、スカートをまくって大きく育ったモノを取り出し、ゴムを着け始めた。
うわっ、ガーターかよ。
スカートをまくった吉川がはいているストッキングは太ももまでしかなくて、それが白いレースのガーターベルトで留められている。
その真ん中にそそり立つ太いモノと、その周りを飾る可愛らしい小物のアンバランスさに妙に興奮してしまうあたり、どうやら俺もかなりこいつの女装に毒されてきたらしい。
準備を終えた吉川は、俺の足を持ち上げてゆっくりと挿入してきた。
中に入ってきたものはやはり太くて固くて、俺の中をみっしりと埋めていく。
中全体を擦られる感触は気持ちはいいのだが、さすがに少し苦しくて、吉川が全部を埋めきった時、俺は吉川と共に大きく息を吐いていた。
「大丈夫ですか?」
少し苦しそうな顔をした吉川の問いに俺はうなずく。
「ああ。
大きくてちょっときついけど、でもすごくイイ。
お前は?」
「俺も……すごくいいです。
藤本さんの中、きつくてあったかくて、最高です。
……動いてもいいですか?」
「もちろん」
俺がうなずくと、吉川はゆっくりと動き出した。
俺を追い上げるというよりは、自分自身の快感を追いがちなその動きは、吉川が自分勝手だからというよりは、単純に余裕がないせいなのだろう。
もしかしたら経験が少ないのかもしれないと思ったが、多少下手だとはいえ、何しろ持っているモノの大きさが普通ではない。
俺の方もすぐに余裕がなくなってきて、いつのまにか喘ぎ声をあげ始める。
やがて我慢できなくなって、俺は先っぽから雫をこぼしている自分のモノに手を伸ばすと、一気にこすりあげた。
「あ、イクっ……うっ……」
「くっ……」
俺が声を上げて達すると、その拍子にきつく締めつけられた吉川も小さくうめき声を上げて達する。
しばらくはそのまま二人して荒い息をついていたが、やがて吉川は俺の中から小さくなったモノを抜いて、心配そうな顔で俺に問いかけた。
「あの……どうでした?」
そういうことを聞くなよと苦笑しつつも、おろおろと不安そうな吉川が妙にかわいくみえたので、俺は正直に答えることにする。
「よかったよ。
お前の、太くて固くて、すげーよかった」
テクニック的なことには敢えて触れずにそう言ってやると、吉川は照れながらも嬉しそうな顔になった。
「結構相性いいみたいだからさ、もしお前さえよければ、また時々こうやって寝ないか?」
「えっ……いいんですか?
ぜひお願いします!」
俺の提案に吉川が食いついてきたことを嬉しく思いながら、俺は体を起こす。
「じゃあ、連絡先交換しようぜ」
「はい!」
そうして、とりあえず互いに後始末を済ませてから、スマホを出して連絡先を交換した。
実は俺は、いつもの店で顔を合わせれば寝るという顔見知りの相手というのはいるが、連絡先を交換するようなセフレ言えるほどの相手は作らない主義だ。
けれど吉川相手には、素直に連絡先を交換するという提案をする気になったので、我ながらこいつはちょっと特別なのかもしれないと思う。
「あ、そういえば、二人の時は別にどっちでもいいけど、他のやつがいる時は俺のことは『ハル』って呼んでくれるか?」
「あ……はい、わかりました。
……すいません、さっきうっかり藤本さんの名前呼んでしまって……」
ゲイの世界では本名ではなく通称を呼び合うのがルールだ。
吉川もそれはわかっているとは思うが、一応釘を刺しておくと、吉川はしょんぼりとして謝ってきた。
「ま、今日は突然だったし、次から気をつけてくれればいいよ。
お前の方は、えーと、『よっちゃん』でいいの?」
さっきママが口にしていたのを思い出して確認すると、吉川は首を横に振った。
「あ、いえ、別に『よっちゃん』でもかまいませんが、普段は一応『ヨシ』って名乗ってます」
「ん、わかった。
それじゃ、よろしくな、ヨシ」
俺がそう言って吉川に手を差し出すと、吉川はおずおずとその手を握った。
「こちらこそ、よろしくお願いします……ハルさん」
「おう」
俺が吉川の手を握り返して返事をすると、吉川はようやく安心したように微笑んだのだった。
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