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Moonless Kiss side A 1 ※
「飛鳥」
耳もとで囁く声の甘さに身体が震える。
身体の中を緩々と動く指がもどかしくて、僕は目の前の愛しい人に訴える。
「沙生、もっと、して……」
きれいな鳶色の瞳に映る僕は、熱に浮かされて淫らな顔をしていた。身体を無理に起こして首に腕を回す。
沙生が欲しくて堪らなくて、口を開いて舌を挿し込んだ。沙生は舌を絡ませながら優しく吸ってくれて、それだけで僕はもう一段高いところに連れて行かれる。
「……ん……っ」
深い口づけを夢中で貪っていると、中に入る指が増えていく。強い圧迫感に身体の芯を快楽が電流のように駆け抜けた。
「あ、あぁっ……沙生……ッ」
沙生はこの身体を知り尽くしているから、僕の一番感じるところを刺激する。じっくりと時間をかけて慣らされた僕の中は、湿っぽい音を立てながらどんどん熱を増していった。
快楽に浮かされながら必死にしがみつけば、僕より少しだけ熱の冷めた身体が心地いい。
「ん、あ…っ、あぁッ……!」
最短で絶頂に連れて行かれて、溢れる快感が涙となってこぼれ落ちる。腕の力を緩めれば、ベッドがわずかに軋んだ。
「飛鳥、大好きだよ」
余韻に浸りながらぼんやりとしている僕にそう言って、沙生は親指で僕の涙を拭う。荒い呼吸の合間を縫って、啄ばむようなキスをしてくれた。それさえも気持ちよくて、また感じてしまう。
さっきから腰の辺りにあたる沙生のものが、硬く熱を持っている。沙生が僕の中に入ってくるのを想像するだけで、もう腰が揺れていた。
僕は沙生の身体を右手で辿って、その半身をそっと握り締める。
「沙生、挿れていい?」
優しく微笑む沙生にキスをする。沙生から漂う柑橘に似た匂いは、甘やかに僕の身体を満たして欲を煽る。まるで幻想の世界にいるかのように錯覚してしまう、不思議な香りだ。
仰向けになった沙生に跨がって、その先端を後孔にあてがい、僕は手の中のものを少しずつ身体に沈めていった。
「あ、ぁ……っ」
鳥肌が立つような快感が身体の中心から湧き起こる。早く奥まで欲しい。だけど、わざと焦らすように挿れていく。
だって、夜はまだ長いから。
「ああ、沙生……」
喘ぎながら名前を呼ぶと、沙生がうっとりと目を細めて僕を見上げる。そっと右腕を伸ばして、包み込むように僕の頬に触れた。
「飛鳥、きれいだよ」
違うよ。本当にきれいなのは沙生だ。
神様に愛された、美しい人。
その清らかな魂が、本来あるべきところへと導かれて僕のもとから消えてしまわないか、いつも不安なんだ。
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