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Moonless Kiss side A 2 ※

もっと強い快楽が欲しくて腰を上下に動かしていくと、沙生が目を閉じて小さく息を吐いた。繋がっているところが融けそうなぐらいに熱くて堪らない。 「あ、ん……っ、ふ…ッあァ……ッ」 がくんと急に突き上げられて、思わず大きな声がこぼれてしまう。 「飛鳥、おいで」 引き寄せられるまま沙生に覆いかぶさると、また甘いキスをくれる。絡まる舌から僕はゆるりと蕩けていく。重なり合う胸が、とくとくと動いていた。 まるで沙生の心臓が僕の中に入ってきたみたいだ。 「沙生、愛してる……」 「愛してるよ、飛鳥」 口にすると、沙生がギュッと抱きしめてくれた。キスをしながらゆっくりと揺さぶられて、僕は必死に沙生に抱きつく。その遺伝子に絡まろうとするかのように。 「あ、ぁ……ッ、沙生、イきそう……っ」 「いいよ、飛鳥……」 こんな緩やかな刺激にも堪えられないぐらい、僕は沙生に囚われてしまっていた。 沙生の赦しに甘えて、僕は容易く果てていく。 「ああ……っ、ん……ぁ……ッ」 力の抜けた身体を沙生に預けて、僕は呼吸を整える。抱きとめてくれる沙生の腕の中は、雲の上のように心地いい。 ずっとずっと、このままでいたかった。 「沙生、浮気したら駄目だからね」 身体を重ねた後、裸のまま羽毛布団にくるまって抱き合いながら、僕は沙生にそう釘を刺す。苦笑する顔は、歳上なのにかわいいと思った。 「飛鳥がこんなにかわいくてきれいなのに、浮気なんてできないよ」 「でも、前に油断してキスされたこと、あったでしょ」 「あれは──」 僕たちが今の関係になる前、沙生が油断していて女の人にキスされたことを持ち出してしまう。子どもっぽいとわかっていたけど、それを知ったときの胸の痛みが癒えているわけではないことも事実だ。 だから、もう二度とこんな思いはしたくなかった。 「うん、ごめん」 沙生のこういう困った顔も、大好きだと思ってしまう。だから、許してしまうしかない。 「じゃあ、こうしようか。春から、同じ大学に通うから……」 一旦言葉を区切った沙生の鳶色の瞳が、美しく煌きながら僕を映した。 「外で一緒にいるときは、ずっと手を繋いでいよう。飛鳥が俺の恋人だって、皆にわかってもらえるように」 「本当に?」 「駄目かな」 「ううん。すごく嬉しい」 頬がのぼせたみたいに火照ってくる。男同士でそんなことをすれば、好奇の眼差しで見られるに違いない。それでも僕は堂々と沙生の恋人でありたかったし、沙生が同じように思っていてくれることがたまらなく嬉しかった。

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