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Calling Kiss 1 ※

「あの……生き別れた弟とか、いませんか?」 思わず口にしてしまった言葉に、その人はまず驚いたような顔をして。 それから、少し申し訳なさそうに笑った。 「残念ながら、ね」 不躾なことを聞いてしまったことに気づいて、何て言い訳をしようかと焦る俺に、その人は優しく笑いかけてくれる。 年は全然違う。でも、本当によく似てる。 「そんなに似てる? 君の好きな人に」 どきりと心臓が跳ね上がる。 初めて会う人に気づかれてしまうぐらい、俺はあからさまに動揺していたんだ。 「違うんです。ごめんなさい」 バツが悪くなってそう言う俺の左手を、その人が優しく引き寄せる。 割れものに触れるようにそっと抱き締められて、体温が上がっていく。 恐る恐る見上げると、至近距離で優しい瞳が俺の困ったような顔を映し出していた。 きっと十年と少しぐらい経てば、あいつもこんな顔になるんだろう。 そう思った途端、ずきりと胸が痛んだ。 「気にしなくていい。その方がきっと、いい時間を過ごせるからね」 シティホテルのジュニアスイートは広くてきれいだ。この仕事で普段使ってるような安っぽいラブホテルとは全然違う。 洗練された雰囲気、上質な家具。大きな窓に映るのは、煌めくイルミネーション。 何もかもが違う。何より、空気が澱んでないのがいいと思った。 いつも覚えるどうしようもない背徳感が、ここにはない。 「えっと……名前。教えて下さい」 「神崎諒介」 フルネームで教えてくれた名前を、胸にしっかりと刻み込む。 「神崎さんだね」 この人のことは、名字で呼ぼう。そうすることで線を引こうとしている自分に気付いて、少しだけ悲しくなる。 「ヒナ、シャワーを浴びようか」 好きじゃないこの源氏名を呼んで誘う神崎さんの穏やかな笑顔は、俺の全てを受け入れてくれてるような気がした。 神崎さんは、俺の服を一枚ずつ丁寧に脱がせてくれた。 二人で服を全部抜いで、広いバスルームに入る。 神崎さんの身体は程よく締まっていてすごくきれいだった。沢山の裸を見慣れているのに、思わず目を奪われてしまう。 シャワーのボタンをプッシュすると、しばらく水が出たあとに熱いお湯が降り注いできた。 お湯を流したまま、俺はボディソープを手に取って丁寧に泡立てていく。 モコモコとした泡がついた手を、神崎さんの肌に滑らせて、できるだけ丁寧に洗っていく。 少しは感じてくれてるのかな。時々漏れる吐息がすごくセクシーで、それだけで目眩がする。 上半身が終わってから、次はひざまずいて掌で下半身を辿っていく。 神崎さんのものはもう大きくなっていて、俺はそこにも泡を塗り込んだ。マッサージするみたいに、優しく。いっぱい気持ちよくなってほしいから。

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