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第5章 ダブルデート side 柳楽遊衣
久しぶりに榎本に会える。
柄にもなく気分が高揚していた。
榎本とキスをしてから3日経つが、熱くて柔らかいあの感触は未だに消えていない。
今日は余計なのが2人いるが、まあしょうがない。あいつらのお陰で一緒に出かけられるわけだし。
それに、これからいくらでもデートする機会なんてあるからな。
榎本の顔を見るとニヤける自信しかないが、榎本は俺を見てどんな反応をするんだろう。
照れたあいつの顔を想像しながら集合場所に行くと、まだ誰も来ていないようだった。
「柳楽く〜ん!」
「ごめんね、お待たせぇ」
少しすると誘ってきた女2人がやってきた。随分めかし込んできたようで、気合が入っているのが分かる。
「真央も日菜もお洒落だね。かわいいよ」
「柳楽くんも格好良い〜!」
「私服ってなんか新鮮だねっ!」
にこっと笑ってそういえば、頰を染めて嬉しそうに笑う2人。
そうそう、お前らは俺に惚れとけばいいんだよ。間違っても榎本のことを好きになるな。
我ながら幼稚だとは思うが、独占欲は人一倍強い方だと思う。嫌なもんは嫌だ。
「あ、榎本くん!」
「悪い、遅れた」
「時間ぴったりだよ!私たちが早く来ちゃっただけだから〜!」
こちらを向いた榎本と目が合ったが、気まずそうにすぐ逸らされる。
…?なんか変だな。
照れている様子は無く、なんというか…居心地の悪そうな雰囲気だ。
「おはよ。どうかしたのか?」
「…はよ。別に何でもない」
声をかけても素っ気ない。なんなんだ?
そのまま歩き出して女2人が喋り出したために、深くは追求できなかった。
「ここきたの何年ぶりだろ〜」
「人多いねぇ」
着いた先は遊園地だった。場所決めは真央と日菜に任せてたけど、この2人意外とアクティブなんだな。
「何から乗りたい?」
「やっぱりジェットコースターでしょぉ!」
いきなり激しいのからはキツイということで、比較的大人しいレベルのものに乗ることにした。
土日ということもあってそこそこ人は多いが、これは待ち時間が15分と短い方だった。
「ていうか、今日来てくれると思わなかったからほんとに嬉しい!ありがとう」
「そんなことないよ。俺も楽しみにしてた」
榎本と会えるのをな。
「榎本君も!こういう賑やかなところ、苦手かと思ってたし。遊園地OKしてくれた時はびっくりしちゃった」
「…絶叫とか、結構好き」
「そうなんだぁ!じゃあ今日はいっぱい乗らなきゃ!」
私も絶叫好きなんだ、と榎本に絡む真央が憎たらしい。
なんだかんだ応答する榎本に先程感じた違和感は無く、俺に対してだけ様子がおかしいことを悟った。
どういうつもりか知らないけど…2人きりになったら話を切り出さないと。
「柳楽くんは絶叫とか大丈夫?」
「スリルがあって楽しいよね」
遊園地も絶叫も左程興味は無いが、榎本が好きなのなら来てよかった。
待っている榎本はいつもより少しだけ表情が豊かで、楽しそうに見える。
「だよねぇ!日菜は怖いけどつい乗っちゃうんだ〜!ホラーとかも指の隙間から見ちゃう」
日菜の言葉を聞いた榎本がクスっと笑った。滅多に笑わない榎本の笑顔に余程驚いたらしく、2人が何事だと声を荒げる。
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