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第4章 酒に飲まれろ 5
舌を入れても嫌がる様子を見せない榎本は、他の誰にも見せたくないくらい色っぽい表情をしていた。
物欲しそうなその瞳は、舌で上顎を擽るように撫でてやると余裕が無くなっていくように蕩けていく。
そろそろ限界だろうか。悩ましい息を吐いて、立っているのが辛そうな榎本を側にあるベッドに押し倒す。
少し驚いたような、緊張したような顔をした榎本に構わず、手を絡めながら激しいキスを続けると、より反応が良くなった。
「…ん…ぅ…ふっ、ぁ…」
初めて聞く榎本の甘い声に耐えられず、絡めていた手を離し身体に滑らせると、ピクリ、と震えた榎本は縋りつくように腕を首に回してきた。
どうやら榎本は意外と甘えたらしい。
軽く捲れた服から除く肌は白く、陶器のようだ。火照ったように少し色づいたその肌は滑らかで、正直女よりも触り心地が良い。
キスを続けながら味わうように撫でていると、緊張からか少し強張っていた榎本の身体から力が抜けてきた。
さすがに今日最後までする気は無いが、味見くらいならいいか。
そう思った時、榎本の腕から完全に力が抜けてスルリと首から解けた。
「やぎら…」
ポツリ、そう呟いた榎本はヘラリと笑ってそのまま目を閉じた。
…嘘だろ?
こんな状態でお預けにされたとは思いたくなかったが、どうやらこの酔っ払いは既に夢の世界に旅立ってしまったらしい。
幸せそうな表情で眠りこけている榎本が少し憎らしかった。
…土曜日、覚えとけよ。
ここに来て何度溜息をついたか分からなかったが、こうして榎本の本音を聞けただけでも収穫か。
スースーと寝息を立てる榎本に布団を掛けてやり、まだ涙の残る目尻にそっとキスを落とした後、1階に降りた。
「キャー―――!破廉恥王子のお帰りよっ」
「…さっきから人に変なあだ名つけんのやめろ」
待ってました、と言わんばかりの熱視線で那架音と紗里に迎えられたが、これ以上ここに長居する気は無い。…あの母親まで帰ってきたら面倒なことになりそうだからな。
「兄上様!どうでしたか?!お兄ちゃんととうとうヤっちまいましたか?!」
左手で輪っかを作り、そこに右手の人差し指を差し込むこの女はなんて下品なのだろう。
「馬鹿ね紗里、トウヤは処女なんだからこんな短時間で出来るわけないでしょ〜」
「はっ、これは失敬…。初めては優しくしてやってください、兄上様」
「…オジャマシマシタ」
これ以上この姉妹の会話を聞いていると耳が腐りそうなので、お暇させていただくことにした。
しつこい見送りを適当に受け流し、帰路に着く。
明日から3日間榎本に会えないのか。
早く土曜になんねぇかな…。
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