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「これ、デキャンタで。グラスは2つ。…それと生ハムとチーズ3種。」
優が値段も見ずに高そうなものを注文していく。
ボクも優もお金には困ってないとはいえ、ここは相当なお店な気がするんだけど。
まぁ、…たまにはいいか。
「赤ワイン久々に飲むなぁ。」
「…そういえば俺も酒は久々だな。」
「え、あのアル中が?あっはは、相当縛られたんだね。」
「誰がアル中だ。飲むと骨抜けになるお前に言われたくない。」
「昔の話でしょ。今日はボクも贅沢しちゃおーっと。」
二人でそう言ってクスクスと笑う。
本当はドレスコードなんていらない居酒屋とかそういう所の方が良かったけど優が選んだなら文句はなし。
早速出されたワインと生ハムを前にボクらは目を合わせて笑った。
「さ、食べよっか。」
「だな。」
優がグラスにワインをつぐ。
2人でグラスの蓋を当てると、軽い音がそこらに響いた。
「乾杯。」
「何に乾杯?」
「俺とお前が今日も親友であることにだな。」
「あはは、優もう酔ってるの?」
「嘘だ。でも感謝してんだよ。」
優はそこまで言うと隠すようにワインを煽ってはグラスを傾ける。
ボクも同じように口をつける。
高いワインの味がする。
渋くて、それから喉が締まって。
優の好きな味がする。
「覚えてる?高校の時さ。放課後の教室で優が会場から持ちたしたシャンパン二人であけてさ。」
「あー覚えてる。飛んだコルクでガラス割れたやつな。」
「そうそう。…っふふ、泡こぼれるの勿体ないからって瓶ごと飲まなくていいのに。優、焦りすぎて。」
「あれ高いやつだったんだよ、確かな。全く味覚えてねぇよ。」
「ボクも飲みたかったのにさー?」
そんな風に歴史を辿るみたいに昔の話をした。
小学校の影踏み。
中学校の部活動。
高校でのヤンチャや、大学での約束。
いつも同じような話をするのにそれは壮大な話で。
ボクらは頬を真っ赤にしてこれ以上ないくらいに笑った。
「それでそん時になぁ…かな、…かなとが…」
「もー優酔ってるでしょー?ふふ、っ…あははっ、!」
「お前も酔ってんだろ??たまにはいーんだよ。…お前の前くらいでしか、まともに酒も飲めねぇんだからな。」
「んーボクの前だけなのー?」
「当たり前だろ。俺にはずっと前から奏斗しかいねーんだから。」
「……ホント?」
思わず聞き返す。
へべれけになった優は片手にグラスを持ったまま細い目で俺を見た。
頬が緩んだ優は幼くて、昔に戻ったみたいで。
優、ボクも。
ボクも優しかいないよ。
「だからぁ…後にも先にも、こんな親友はお前だけだっての。」
親友。
わかってる、それだけでいい。
ボクが優の親友で、優はボクの親友で。
それだけでいい。
「えへへ、じゃあ…ボク以上に大切な人作っちゃダメだよー?」
「おう。優様史上最高の人間だ。」
「やったー光栄だなぁ。」
だから、ボク以上に。
誰かのことを愛さないでね。
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