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*多忙につき更新大変お待たせしました…!
またお待たせすることあるかもしれませんが今後もよろしくお願いします。
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テレビのニュースを眺めながら、ウトウトと左右に揺れる。
この感覚は退屈な授業中に似てる。
眠気に揺られながらなんとなく教室が見えて。
黒板、先生の声、舞うチョークの粉。
白い粉が舞い視界に飛びかかる。
それは生ぬるくて、頬に張り付くような
ぁ"
「皐月。」
その声に目を見開く。
皆木は俺の顔を覗き込むと、眉を少し下げた。
「寝るか?もう半分寝てるだろ。」
「………ん。」
怖い夢を見た。
とは、どうしても言えなかった。
俺が一度頷くと、皆木は立ち上がり俺へ手を差し出す。
その手を握ろうと手を伸ばすのに
何故かそれは欲望にまみれた男の手に見えて。
この人だけは 俺を愛してると、そう信じて分かっているはずなのに。
どうして。
「…怖い夢でも見たか。」
何も言っていないのに、その人は俺へそう言った。
ソファの足元へしゃがみ俺の顔を覗き込みながら。
息を吸って、吐いて。
平気だと言い聞かせて。
怖くないと思い出して。
「見た…でも、もう平気。」
「…夜はやっぱり怖いな。手、握れるか。」
「…ん。」
手のひらを上にして差し出された手。
重ねるように手を乗せると優しく握られて、皆木は「大丈夫だ」と呟いた。
俺もその手を握り返して「大丈夫」と呟く。
「一緒に寝よう。」
「……うん。」
手を引かれるわけでもなく、押し返すわけでもなく。
ただ繋がるだけの手。
この時間を怖いほど特別だと思った。
いつか終わるんじゃないかなんて 偉そうに。
*
大袈裟に怯える俺を俺ですら面倒だと思うのに皆木はまるで初めてみたいに優しく手を握ってくれた。
軽くて冷たい布団の中に2人で収まって目を閉じる。
少し遠い思い出の中、いつも二人はこうしていたのに今並んでいる事が奇跡みたいに感じて。
俺は恥ずかしくて片手だけ皆木へ預けたまま背を向けては丸くなった。
「お前がいない間、このベッドが広くて仕方なかった。」
「そりゃ…これだけでかいベッドなら当たり前だろ。」
「そういう意味じゃない。わかってないな。」
「わからなくていいよ、別に。」
本当に伝えたい意味はわかってるのに、俺は知らないフリをして目を閉じた。
皆木の手から指を離すと追いかけるように指がついてくる。
指を絡めるように、人差し指が中指の根元をなでた。
「俺はわかってて欲しい。どれだけ、寂しかったかって。」
「……嘘。本当はわかってた。」
「お前そういう所あるからな。」
「悪かったな。」
「可愛くない。のに、そんなところも好きだと思う俺が怖い。」
「アンタ俺の事大好きだな。」
そう呟く。
照れ隠しに、なんとなく。
絡めた指が伸びて手のひらまで覆って。
吐息が聞こえるほど近くに皆木がいる。
心臓の音まで聞こえそうな程近く。
それから、低い 心の奥へ言い聞かせるような声で
「あぁ。悔しいくらい、お前が好きだ。
もうこれっぽっちも隠さない。」
なんて
悪魔みたいに唱えた。
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