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男か女か

あの子……もう帰っちゃったかな…… なんて俺はぼーっとして考えてしまう 「お兄ちゃん?しっかりしてよ」 と心菜は俺の腹を小突いて来た 割と痛い…… 「ごめんごめん…」 心菜がここに居た理由は,俺とペアで撮るはずだったモデルの子が高熱出したとかで急に休む事になったらしい だから代理…代理にもならないけど,心菜が代わりに来ていたみたいだ 俺はカメラの前で『表情』を作る そうだ…仕事中だからしっかりしなくちゃならない 俺は自分自身にそう言い聞かせカメラと向き合った 「じゃあ,俺は帰ります」 撮影が終わり俺はさっさと帰宅をする 暫くオフも貰えたしどこか久しぶりに出掛けてみようか…なんて考えてみる ふとその時あの子のことを思い出した もう…やっぱり帰ってるかな? 俺はあの子を家に招いた理由はもう1つあった…… でも純粋に俺の作った料理を美味しいと言ってくれる姿を見て,罪悪感と自己嫌悪に塗れた だから敢えて俺はあの子に鍵を任せた 俺なりの敬意…みたいなものなんだけど… 携帯を見ると時間は21時を示していた 帰ってるよなぁ… 俺はそう思いつつもマンション下まで来て顔を上げ,自分の部屋を確認する 電気が付いてる…?! 俺は思わず走り出して階段を駆け上がり部屋の戸を開けた 何故か自分の部屋なのに小声で「ただいま…」と言い部屋を足音を立てずに忍び込んでいく カチャカチャと食器の擦れる音が聞こえてくる… 俺はリビングに繋がる戸を開けてその音のする方を確認する キッチンにあの子が立っていて洗い物をしている様だった ちらっとリビングに目線を寄越せば美味しそうなご飯が並べられていた 「居たの…?」 俺はわけも分からずふと言葉を口にする するとハッとした空気が一瞬流れてから申し訳なさげに「はい」と答えた 「帰らなくて大丈夫?」 俺が声を掛けると彼女?は目線を落として口をもごもごとさせた それから口を開いて 「分からないんです…帰り方が……。俺,ここより遠い所にいたはず何ですけど…気がついたら建物の中で倒れてて…」 遠慮気味にそう話をする姿を見て俺は嫌な感覚がした そして嫌な予想が浮かぶ 俺はそれを確かめないまま後先考えず彼女?の肩を掴んだ 「大丈夫!?!?レイプとかされてない!?」 俺の言葉に彼女?は一瞬キョトンっとしてからカァーッと顔を真っ赤にさせた それから「されてません!絶対!そもそもされる訳が無いです!」と大きめの声を出した 「されないなんて限らないじゃん,男はみんな狼!女の子なんだから気を付けないとッ」 「な……ッ 俺は男です!!」 俺は思わずキョトンっとしてしまう あ、男……え,あ,マジで? こんな綺麗な顔で背も小さくてムダ毛も無さそうなむっちりした太ももと足で… 肩幅も狭くて柔らかそうな体つきで…… 何より可愛らしいこの声で… 嫌でもよく聞くと,よく見ると中性感ある見た目と声な気がする 俺は思わず「ごめんっ」と頭を下げる 「あ…いえ,慣れてます…」 逆に食い下がられてしまった

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