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第24話
喜んでくれるかな……とドキドキしながら反応を窺っていたら、彼は口元を少し緩ませ、はにかむように言った。
「……ありがとう、大事にする」
「……!」
その表情を見た瞬間、晴斗の中で喜びが弾けた。腹の底から嬉しさがこみ上げてきて、全身から噴きこぼれそうになった。
「おおお……九尾が笑ってくれた! ていうかお前、笑顔めっちゃ可愛いな!」
「えっ? 可愛い……?」
「やべっ、どうしよう……ちょっとツボった。今の笑顔もう一回頼む! 今度はちゃんと写真撮っとくから!」
「そんな大袈裟な……。私だって笑うことくらいあるし、そこまで珍しいものじゃないぞ」
「でも九尾、今は悲しそうな顔が多いだろ? 全然元気もないし……そういう意味では、めっちゃレアだなって思ったんだよ」
「……それは……」
「まあでも、そうやって少しでも笑えるなら大丈夫だな。ちょっと安心したよ」
晴斗は満面の笑みを浮かべてみせた。そして九尾の手を掴んで言った。
「さ、次に行こうぜ。まだ買い物は残ってるからな」
「……次は何を買うんだ?」
「晩飯の惣菜だよ。今日母さんパートでいないから、自分で用意しなきゃいけないんだ」
百貨店の地下に足を運び、夕食のメニューを考えることにした。九尾の好みがわからなかったので、彼に聞きながら惣菜を見て回った。
「九尾はどういう食べ物が好きんだ? キツネだからやっぱり油揚げか」
「……油揚げ? なんだ、それは?」
「は? まさか食べたことないのか? ていうか平安時代の食生活ってどうなってたんだよ」
「どうって……主食は米で、魚や鳥の肉、汁物……あとは漬物とか」
「あー……聞いてる限りはバランスよさそうだけど。……まあいいや、とりあえず油揚げは買っていくか」
他にも気になったものがあったら教えてくれ……と言って、晴斗は歩を進めた。
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