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第41話*
「ひっ……、ああぁっ!」
腹立ち紛れに、勢いよく中に押し入った途端、九尾が頭を反らして大きく仰け反った。ぶるぶると全身を震わせ、膝を抱えていた手がすべり落ちてしまう。見れば瞳の焦点がぼやけていた。チラッと下半身に目をやったら、腹部に白濁が飛び散っていた。
相変わらず九尾は反応が早い。これも晴明に開発されたためなのか……。
「あっ! あっ! 待って晴斗、今はまだ……!」
一度達して敏感になった身体を、より深く貪っていく。奥を小刻みに突いてやっただけで全身を痙攣させ、銀髪を振り乱して身悶えた。多少激しくしても、戸惑っていたのは最初だけで、すぐさま順応し貪婪に晴斗を食い締めてくる。
「はう、あっ……あぁ、あん……っ」
「なあ、九尾……」
何か言おうと思ったのだが、口を開きかけたところで言葉が詰まってしまった。
いい加減、晴明さんのことなんて忘れちまえよ。いくら想ったって彼はもういないんだから。自分を裏切った人のことで苦しむなんて損だぜ? 見ている俺だって辛いし、忘れた方がお前のためだよ……。
――いや、そうじゃねぇか……。
安倍晴明に嫉妬している自分に気付き、晴斗は自嘲気味に微笑んだ。
一度誰かに愛された記憶は簡単に消せるものではない。最終的にひどく不幸な結果に終わったとしても、晴明に愛されていた時の九尾は、確かに幸せだったはずなのだ。晴明の思惑がなんであれ、その時の九尾にとっては、晴明に愛されていたことこそが真実だったはずだ。その美しい想い出だけは、消してはいけないと思う。
ならば自分にできることはただひとつ。九尾の側にいて、彼を慰めてあげることだけ……。
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