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第40話*

「なあ……九尾、気持ちいいか?」 「あ……う、ん……っん」 「そうか。よかった……」  理想的な反応を示す九尾に満足しつつ、晴斗は淫らな刺激を与え続けた。男を抱くのは初めてだが、九尾が相手だったらいくらでもその気になれそうだ。  ――でも、この九尾の反応……。  少なくとも初めてじゃねぇな、と思った。いくら慰めが欲しいとはいえ、初めてだったらもっと緊張するはずだ。いや、そもそも経験のない人は、好きでもない男に「慰め」を要求したりしない。  一人で弄っていたとは思えないから、おそらく晴明に可愛がられていたのだろう。九尾ほどの美貌と肉体ならば、その気になる男は山ほどいるはず。九尾は人間の生活について知らないことが多いから、いろいろと手解きして教え込んだのかもしれない。あんなこともこんなことも。  ――晴明さん……あんたは一体……。  何も知らない九尾をここまで開発して、愛する悦びを教えておきながら、理由も言わず突然封印する。何故そんなひどいことをするのか。どうして恋人を裏切るような真似をしたのか。晴明は一体何を考えていたんだろう。九尾のこと、本当はどう思っていたんだろう。  もし、面白半分に弄んでいただけだとしたら、絶対に許せない。 「九尾……」  晴斗は十分に解した窄まりに自分の欲望をあてがった。先端を擦り付けた途端、待ってましたと言わんばかりにそこがばくばく痙攣した。  挿れる直前、もう一度九尾を見下ろした。九尾はすがるような目でこちらを見つめてきた。  ――晴明さんに抱かれる時も、こんな目をしてたのか……。  そんなことを考えたら、だんだん腹が立ってきた。  ……ずるいな、晴明さん。九尾の気持ちを踏みにじったくせに、死んだ後も九尾に想われるなんてさ。俺なんかちょっと耳を揉んだだけで怒られちゃうのに、何なんだこの差は。どんな事情があったか知らないけど、あんたが九尾のことを傷つけたのは事実だろ。恨まれるならともかく、なんで未だに想われてんだよ。ずるいよ、こんなの。不公平だよ……!

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