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第48話

「じゃあ九尾、ここで待っててくれ。そこのポストにレポート出してくるから」  インフォメーションギャラリーの前で、晴斗は言った。ここには各学部の連絡事項以外に、総合的な大学の情報等が掲載されている。 「わかった。待ってる」  九尾は小さく頷き、掲示板をひとつひとつ丁寧に見始めた。決して面白い情報が載っているわけではないが、九尾にとっては全てが物珍しいようだ。  晴斗は早速学生課に入っていき、窓口の横に設置されているポストにレポートを投函した。夏休み中だからか窓口も開いていなくて、学生もほとんどいなかった。  さっさと帰ろう……と思い、インフォメーションギャラリーに戻ったのだが、九尾に目をやった途端ぎょっとしてしまった。 「ちょ、ちょっと……。わかったから離れて……」  九尾が一匹のタヌキに襲われている。タヌキは九尾の肩によじ登り、ぶんぶん尻尾を振って彼の銀髪に噛みついていた。 「うわっ! なんだこのタヌキ! 九尾から離れろ!」  慌ててタヌキを引き剥がし、遠くへぶん投げる。相当びっくりしたのか、九尾は目を白黒させながら肩で大きく息をしていた。 「大丈夫か、九尾? この大学、時々こういう動物出ることあるんだよ。イノシシやマムシも出るから、気を付けた方がいいぞ」  晴斗が通っている大学は、山を切り崩して新しく建設されたので、校舎の裏側に回るとすぐそこは山道……という状況にあった。掲示板に「イノシシが出ました」という貼り紙が貼ってあることもザラだし、大学内に「マムシ注意!」の看板が立っていることも日常茶飯事である。先程のタヌキもきっと、山に生息していたヤツが偶然現れたんだろう。まったく、迷惑なタヌキだ。 「乱暴な人間だなあ。初対面でいきなりぶん投げることないじゃない」 「……はっ?」  突然下から声が聞こえて、晴斗は驚愕して目を見開いた。先程のタヌキがこちらを睨みつけていた。

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