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第49話

 タヌキはとことこと足元に寄ってくると、いきなり晴斗のふくらはぎに噛みついてきた。 「いってぇ!」 「ふふん、僕をぶん投げたお返し。呪われないだけマシと思いなよ」  まるでアカンベーをするみたいに、ぺろりと舌を出すタヌキ。  あまりに憎たらしかったので、またぶん投げてやろうかと思った矢先、タヌキは再び九尾の肩によじ登って嬉しそうに尻尾を振り始めた。 「九尾ちゃーん! 久しぶりぃぃ! こんなところで会えるなんて思わなかったよぉぉ! 元気だったぁぁ?」 「あ……はあ。まあ、そこそこ……」 「あれえ? なんか元気ないね? よし、僕が『元気が出るまじない』をかけてあげよう! ぽんぽこぽんの……」 「いや、大丈夫だから……。というか、タヌキのまま纏わりつかないでくれないか?」 「何? タヌキ変化を解いて欲しいわけ? ふふん、それこそ久しぶりだなぁ。間違えて人間になっちゃったらどうしよ~?」  ケラケラ笑いながら、タヌキはぴょんと九尾から飛び降りた。そして、地面でくるりと宙返りをする。  次の瞬間、隣にやや小柄な少年が現れた。明るい茶髪にくりっとした大きな目。頭のてっぺんにはキチンとタヌキの耳がついており、尻尾もタヌキのものが三本生えている。 「あー……やっぱりこの格好、ちょっと変な感じがするわ~。ねえ、なんかおかしなところない?」 「…………」  自分の姿を見下ろしているタヌキの少年を見て、さすがの晴斗も顔が引き攣った。 「九尾……こいつは一体……」 「……三尾の狸。一応、平安時代からの知り合い……」 「やだな~、『唯一無二の親友』くらい言ってよ~! 寂しいじゃない」  なんの躊躇いもなく、九尾の腕に絡んでいるタヌキの妖怪――三尾。放っておいたらこのままキスしそうな勢いだった。 「おい、お前! いい加減九尾から離れろよ! 暑苦しい!」  無理矢理九尾から引き剥がそうとしたのだが、三尾は懲りずに九尾にくっつき、それどころか晴斗を尻尾でベシベシ叩いてくる始末である。

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