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第59話

「この際だからハッキリ言っておくけど、俺は九尾のこと好きだよ」 「え……」 「だからずっと一緒にいたいし、出て行って欲しくなんかない。九尾がいてくれるから、俺は毎日楽しく過ごせるんだ。可愛い子がいない男の一人暮らしなんて、地味だしつまんないぜ?」 「…………」 「それに……俺は晴明さんとは違うからさ」  そう言ったら、九尾は初めて顔を上げてこちらを見た。 「晴明さんは立派な陰陽師だったから、いろいろ立場ってものがあったんだろ? 家族とか地位とか……守らなきゃいけないものもたくさんあったんだよ。でも俺はそうじゃない。俺はただの大学生だし、守るべき家族もいない。実家の両親は京都住まいだからな。だから、何かを守るために九尾を切り捨てることは絶対しないよ」 「晴斗……」 「晴明さんに裏切られて、タヌキにも変なこと言われたから、ちょっと疑心暗鬼になってるんだろ? 大丈夫だって、俺が九尾を裏切ることはない。むしろウザいくらい束縛して嫌われるかもしれねぇわ。考えてみりゃ俺、毎回そのパターンでフラれてるんだった」  ハッハッハ、とあえて明るく笑い飛ばしたら、九尾はやっと少しだけ笑ってくれた。 「……そうだな。晴斗は私に嘘ついたことはなかった」 「だろ? だいたい本当に迷惑だったら、わざわざ東京まで連れて来ないし。九尾のことが好きだから、あれこれ世話を焼いてるんだよ。だからお前は変なことは気にせず、ここにいていいんだ」  真っ直ぐに九尾を見つめ、力強く断言する。  すると九尾は眩しそうに目を細め、ふわりと微笑んだ。 「……ありがとう、晴斗。本当に優しいな、あなたは」 「優しいというか……まあ、好きな相手には優しくしたくなるもんだからな。ぶっちゃけ、下心もあるしさ」 「……下心?」 「いや、だからこういう……」

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