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第63話

「いかにも人間らしい自分勝手な考え方だね。刹那的な生き方を望んでるのは、人間の方でしょ。僕たちに寿命はないんだから」 「そうだよ。でも刹那的で何が悪い? お前みたいに千年もダラダラ生き続けるより、百年をめいっぱい楽しんで生きた方がよっぽど充実した人生になるじゃないか。お前からすりゃ、人間なんて愚かでちっぽけな生き物にしか見えないだろうけど、それでもみんな精一杯生きてるんだよ。千年生きてるからって、上から目線でバカにすんな!」 「……言うねぇ。ていうか別に僕、ダラダラ生きてるつもりはないんだけど」  手すりに寄りかかり、フン、と鼻を鳴らす三尾。 「ま、僕は基本的に人間のこと信用してないからさ。九尾ちゃんが変な人間に騙されないように、これからもこっそり見張らせてもらうよ。千年前と比べて妖怪もかなり減っちゃったし……平安時代からの友達って、かなり貴重なんだよね……」  その時、不意に手すりがギシッと鳴った。錆びて古くなっていた手すりは、三尾の重みで柵が折れてしまった。 「うわっ……!」  三尾がバランスを崩し、ベランダから転落しそうになる。 「危ない!」  晴斗は落ちていく三尾の腕を掴み、すんでのところで転落を防いだ。  だが、三尾の身体は不安定にベランダからぶら下がっている状態である。晴斗の手も夏の暑さと、緊張でだんだん汗ばんできた。 「おい、早くそっちの手も……!」 「いや……手、放していいよ」 「はあっ? お前、何言ってん……」 「僕がこんなところから落ちたくらいで、死ぬわけないでしょ。だいたいここ、二階だし」  ……言われてみれば、確かにそうだ。地面との距離は十数メートル程度しかない。 「でも、全く無傷ってわけにはいかねぇだろ……っ! いいから早く手を出せよ……!」 「はあ……もう」  すると三尾は呆れた顔で溜息をつき、もう片方の手で晴斗の手首を打った。

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