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第73話
「だったら晴斗の言う通りにしよう」
「え、マジで?」
「ああ。芸能界自体に興味はないが、それが一番いい方法なら仕方ない。玉藻前と話をするために、私は『もでる』になる」
「九尾……」
彼の紫色の瞳には強い光が宿っている。これは何か目的を見つけた人の目だ。こんな九尾、初めて見た。なんだかかっこいい。
「……よし、わかった」
晴斗は九尾を真っ直ぐ見つめ、同じくハッキリと告げた。
「じゃあ、俺も協力してやるよ。九尾が玉藻前に会えるようにな」
「え……いいのか?」
「ああ。九尾のためならいくらでも手伝うって。それに、いきなり一人で仕事するってのも不安だろ? マネージャーでもやってやるよ」
そう言ったら、九尾は明らかにホッとした表情になった。自分で決めたこととはいえ、心のどこかではやはり不安だったようだ。
晴斗は更に言った。
「それに俺も知りたいからさ。なんで九尾が封印されなきゃならなかったのか。晴明さんは一体何を考えていたのか……」
「晴斗……」
「あと、純粋にモデルをやってる九尾を見てみたい! プロのカメラマンが撮った九尾の写真、めっちゃ綺麗だろうしさ~。写真集出たら保存用・観賞用・普段使い用で三冊くれよ?」
「あ、ああ……まあ、それはな……」
やや呆れながらも、どことなく嬉しそうな九尾。
――それにこの件が片付けば、九尾の心の整理もつくだろうしな。
そうすれば、九尾も気持ちに応えてくれるかもしれない。晴斗は九尾の両手を握り締めた。
「よし! 頑張るぞ、九尾」
「ああ、もちろん」
九尾も強く手を握り返してくれた。
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