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第96話
玉藻前とは、そんなに手強い妖狐なのか。晴斗が身構えている中、九尾は更に言った。
「あなたの考え方、私は嫌いだ。呪詛で人間と戯れるなんて……理解できない」
「そう言うと思ったわ。だから私も、あなたのことは嫌いなの。千年前から……ずっと」
「……うっ!」
次の瞬間、九尾の身体がぐらりと傾いた。ドサッとその場に崩れ落ち、ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返している。
「九尾!? おい、どうしたんだ! しっかりしろ!」
慌てて抱き起こしたものの、九尾は苦しそうに喘いでいるだけ。眉間にシワが寄り、綺麗な顔が熱を持って赤くなっていた。瞳の焦点がブレ、悪寒がするのか奥歯がカチカチ音を立てている。
「お前! 九尾に何をした!? 早く呪詛を取り消せよ!」
晴斗は九尾を抱きかかえながら、玉藻前を睨みつける。
彼女はスッ……と立ち上がり、こちらに近づいてきた。
「……あなたも相変わらずね。姿かたちは変わっても、心は常に九尾に向いている……」
「わけわかんないこと言ってんじゃねぇよ! そんなことより早く呪詛を……」
「だったら、あなたが解いてあげたら? 晴明」
「……はあ?」
さっきから何を言っているんだ、この女は。ますます腹が立ってきて晴斗は怒鳴った。
「お前の冗談に付き合ってる暇はねぇんだよ! いいから早く九尾の呪詛を解け!」
見るからに苦しそうな九尾を抱き締める。腕の中でぶるぶる震え、呼吸も不規則になってきた。早くしないと本当に死んでしまうような気がした。
すると玉藻前は低い声で呟いた。
「……気に入らないわね。あの頃の晴明とは別人になっておきながら、それでもなお九尾を想うなんて……」
「え?」
「理解に苦しむわ……!」
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