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第111話
「会いたかった……! ずっとずっと、あなたと話がしたくて……」
「そうだね、私も会いたかった。詫びたいこともたくさんあったから」
「詫びたいこと……」
「勝手に封印してしまって、本当にすまなかった。あの時はああするしかなかったんだ」
「……もういいんだ。あれは私のためにやってくれたことなんだろう?」
「だがお前を苦しめてしまったのは事実だ。すまない、九尾……許してくれ」
「本当にもういいんだ。あなたは私を守ってくれた。それだけで私は十分だ」
「……ふふ。お前は相変わらず素直で純粋だな。だからつい、手を貸したくなってしまう」
晴明が優しく九尾の銀髪を撫でている。九尾も幸せそうな顔で、晴明の首筋に頬を摺り寄せていた。
――はあ……これはさすがに、俺の入り込む余地はねぇな……。
仕方なく晴斗は、一歩下がって二人の様子を眺めた。やっぱり九尾の一番は、今でもなお晴明さんなんだなと知って、少しせつなくなった。
一通り九尾を撫でると、晴明はやんわり彼を振り解いてこちらに向き直った。
「きみが安倍晴斗くんだね?」
「ええ、まあ」
「なるほど……。しかし、意外と似ていないものだな。きみは私の生まれ変わりのはずなんだが」
「いや……それ玉藻前も言ってましたけど、俺は信じてないですよ? 百歩譲って生まれ変わりが本当だとしても、生まれた時代も育った環境も違うんだから、全然違う人物になるのは当然です。だいたい俺、陰陽術なんてこれっぽっちも使えないし」
「ふふ、確かにそうだね。科学技術が進んだ平和な時代に、陰陽術なんて必要ない」
軽やかに微笑む晴明。
九尾はきょとんとした顔で、晴明と晴斗を見比べていた。
「ええと……それってつまり、晴斗と晴明は同一人物だってことか?」
「違うよ、九尾」
晴明は九尾に言い聞かせるように、淡々と言った。
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