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第5話

「じゃあ自動車作る工場で働いてるんだ?」 「あぁ、内勤もするけどな」 「へー内勤か、授業中ずっと寝てた浩一にもできるんだな」 「おまえ今、褒めたふりしてディスったよな」 浩一が「ここだ」と案内してくれた喫茶店は女の子が好きそうなおしゃれなところだった。ここ最近、外食なんてしてなかったから久しぶりに来たのがこんな店で正直びびったけど。 「そんなことないってばー」 「うそつけ、おまえの語尾に“笑”が大量に見えるぞ」 「ふはっ、チャットじゃないんだから見えるわけないじゃん」 ……浩一と話すのは、すごく楽しかった。 kと同じ喋り方、耳触りのいい低くて滑らかな声、オレが何か言えばすぐさま返ってくる面白い返し。 そっか、こういうやつだったなって思う。一見無愛想に見えるけど、話したらすげぇ面白くって、ずっと浩一と話していたいなって中坊だったオレは思って……。 「おい、遠藤!聞いてるのか?」 「へっ?……あぁ、ごめん、聞いてなかった、何?」 「……あのさ、なんで……」 「うん」 「なんで、高校入った途端、連絡取らなくなったんだ?」 「……それは」 「さっき、親友だって言っただろ?ならなんで連絡取ってくれなかったんだ。他の奴らには連絡しなかったとしても、俺だけには……俺だけには」 連絡取ってほしかったのに、と小さな声で言われてオレは心の中でごめんとつぶやいた。 だけど、それだけは言えない。その理由だけは、どうしたって言えない。 なぜなら、言った途端にオレと浩一の仲は切れるから。それに、せっかく手に入れたゲームって居場所も失いたくない。 さて、どうやってごまかそうか。オレがない知恵を絞りだそうととしてる時に。 「あー、遠藤ホモいるじゃん」 無慈悲で残酷な女の声が、訪いを告げた。

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