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4-1/最終章

ゴールデンウィークが駆け足で過ぎ去ってやたら長く思えた五日間の末の金曜日。 「お邪魔します、野宮さん」 待ち遠しかった週末の夜、宅飲みの約束をしていた久世が残業を終えて八時過ぎにやってきた。 ちょっとばっかし超過勤務して退社し、さっとシャワーを浴びて待っていた野宮は同世代の恋人を笑顔で出迎える。 「ん? 久世サン、どした?」 玄関で突っ立ったまま、なかなか中へ上がろうとしない久世に野宮は首を傾げた。 過ごしやすい初夏の夜。 濡れた茶髪、肩にタオル、五分袖ゆったりシャツにハーパンという部屋着姿の野宮を前にして上下スーツの久世は改めて言う。 「ただいま、野宮さん」 風呂上がりで温まっていた野宮の頬がさらなる火照りを帯びた。 「お、おかえり、久世サン」 「おかえりなさいのキスは?」 「っ……じゃあ、ただいまのチューは……?」 実際は同じマンションの別フロアにそれぞれ住んでいる二人。 もう何回も繰り返してきたはずのキスを何とも新鮮な気持ちで交わしたのだった。 「はい、焼き鳥、作り立て」 「いー匂い、うまそ。俺はスーパーで割引になってた刺身買ってきた、それと黒胡椒ポテサラ。あとワイン」 「ワイン? 珍しい」 「ぱっと見、色に惹かれたっていうか」 「ロゼか。いいね」 「先にビール?」 「やっぱり先にビールじゃない?」 互いに持ち寄ったおつまみ料理をローテーブルに並べて晩酌開始。 「ぼんじりウマ」 「じゃあワイン開けようか」 「えッ、早ッ、もうビール飲んだのかよ久世サン?」 「喉乾いてたから。うん、これ飲みやすい」 「明日どーしようか」 「映画でも観に行く?」 「手羽ギョーザ、コッチちょーだい」 「ハイ」 「DVD借りて久世サンちでだらだら観んのは?どう?」 床にあぐらをかき、カチャカチャと食器を音立たせ、時間を気にせず飲み食いに耽りながら休日の予定を二人で立てる。 出会ってまだ一年も経ってないけど、ほんっと居心地いいんだよなぁ、久世サンゾーン。 こうして野宮さんと過ごす時間にも言えるけど、仕事中、一緒に何を食べようか、休みの日に何をしようか考える時間もいとおしくなってきた。 「あ。やっぱり」 「うん? なに、野宮さん」 「このワインの色、何か久世サンぽいな~って思って、買ったわけでして」 「そうなんだ。バラ色で、どちらかと言うと女性的な気もするけど」 「何ていうか、こう……すけべ色?」 「俺っぽいすけべ色に惹かれて買ったんだ?」 胸中のみならずオープンに惚気合う、金曜の夜にとことん浮かれる二人なのだった。

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