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「実際さ、観たいやつって映画で観ちゃってんだよなぁ」
自分でDVD鑑賞を希望しておきながら、いざレンタルショップに来ると借りたい映画が思いつかず、野宮はアクションとSFのコーナーを無駄に行ったり来たりした。
「ヒットしたやつなら、ちょっと待てばテレビであるもんなぁ」
土曜日の昼過ぎ、マンションから一番近い店舗でどうしようかと悩む野宮に久世は提案してみる。
「それならいっそ昔ハマったアニメとか」
結果、久し振りに訪れたアニメコーナーに思いの外長居し、二人とも幼少時代に観たことがある懐かしの作品をレンタルした。
「……あれ、やばい、泣ける」
「……名作かもしれない、これ」
「……フラグ、秀逸すぎ」
「……日常の尊さ、非日常への抵抗感が丁寧に描かれてるよね」
DVDプレイヤーがある久世宅で二人して懐かしのアニメに想像以上にのめり込んだ。
「DVD欲しいかも」
ソファにごろんと寝そべり、映画の中盤から久世に膝枕してもらっていた野宮は普段なら早送りするエンドロールまできっちり目で追っていた。
「この声優の人って、もう亡くなった?」
「うん。やっぱり二十年以上前の作品だしね」
「この頃からアイドルとかゲスト参加してんだぁ」
「しかも本人役っていうね」
「お腹へった」
ちょっと暑いからと、上には五分袖ゆったりシャツ、下はボクサーパンツ一丁でいる野宮のこどもじみた発言に久世は笑った。
「晩ごはん、どうしようか」
単調なエンドロールから、寝癖がついている眼下の茶髪に久世は視線を移動させた。
セットされていない手つかずの髪に指先を滑り込ませて地肌を優しく撫でる。
「何か作ろうか? それとも外で?」
「ん……何かコレ見てたらあの店行きたくなってきた」
「あの店。じゃあ、ソコに行こうか」
「ちょっと遠いけど。昔よく家族で食べに行ったトコ。チーズハンバーグうまかった」
メニュー画面に戻ると野宮は欠伸して「ちょっと眠い」と、ごろんと寝返りを打ち、久世は手元にあったリモコンでDVDを停止した。
「じゃあちょっと寝て、一休みしてからチーズハンバーグ食べに行こう」
「う……ん……」
昨夜、遅くまで野宮を離さなかった久世は眠たげな恋人に心の内で「ごめんね」と詫びて、あっという間に眠りに落ちた彼の寝顔を心行くまで観賞した。
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