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スキンヘッドのボディービルダーみたいなマッチョが、Hey!と声をかけてきた。俺を連れてきたのはコイツだ。
俺の頭が肩くらいのところにある大柄な白人だった。英語で話しかけてくる。
「酔いが覚めたんじゃないか」
って言ってた。
「少しね」
って言い返したら、向こうの方がびっくりしてた。俺が英語話せると思ってなかったんだろうな。
「すげー部屋だね、なんの仕事してんの」
立て続けに聞いてみた。こんなところ泊まれるんだから、もしかしたらあまり軽口叩けるような相手じゃないのかもしれない。
結局濁されて、逆にお前は何の仕事してるんだって聞かれた。
「フリーターみたいなもんだよ。じゃなきゃあんなところで呑んだくれないだろ」
と適当なことを言った。ここでお互いが何者なのか、詳しく知る必要もないと思ったから。
「何で俺をここに連れてきたんだ?」
一番大事なのはコレ。
こんなとこに泊まってるんだから、金品目当てではないだろう。敢えて問いただしたのは、男の目的に薄々感づいていたからだった。
男はちょっと咳払いして
「ボディランゲージさ」
と言った。
案の定だった。けれど不思議なもので、俺の方も全く嫌な気はしていなかった。あ、これで帰らなくていい理由ができた。なんて思うくらいで。
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