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結果的に、俺たちは名前すら名乗らなかった。 互いに呼び合うこともなくことに及んだ。 ハッキリしたことといえば、彼は経験値の高いゲイであるということだけ。 俺はホントに全然そっちの趣味はない、経験値ゼロのいわゆるノンケ。 「マジ俺そういうケないからね」 怖気付くでもなく淡々としていると、素っ裸になった俺を見てゲラゲラ笑ってた。 「その割にすごい体してるじゃねぇか」 しまいにクレイジーとか言いやがる。そりゃあそうか、手首まできっちり刺青が入ってんだから。 「あんたもよくこんなのお持ち帰りしたね、ヤバい奴だと思わなかったの?」 思わないわけないか、Tシャツ一丁でいたんだから、バーの暗がりですら目立つから、ずっとこの腕の刺青は見えてたはずなんだ。 「刺青なんか珍しくねぇよ。この国はあんまりそういうのに理解がねぇとは聞いてるがな」 その通りだ。それを承知で入れたけど、本当に肩身が狭い。 「だから、何でそんなに入れてるのか興味がある」 品定めするみたいに笑うもんだから、つられて笑っちゃった。 「それで連れてきたって?」 「まぁそんなとこだな」 「はーん、そうですか」 「あと、顔が好みだ。俺は、お前みたいな目の大きいアジア人が好きなんだ」 「そりゃどうも」 そんなに褒められたこともないから、何だか面白くなってきちゃって、ニヤニヤするのを止められなかった。

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