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第40話 初愛

※直接的な性描写が入ります。苦手な方は読み飛ばしてください※  久しぶりの、しかも最高とも言えるメンバーのパフォーマンスに、俺は酔っていた。部屋に京と共に帰り、とても料理を用意できるような気分ではなかったから、ピザを頼む。配達が来るまでの間に、それぞれの部屋でシャワーを浴びた。 「あんなに沢山、人が集まるなんて思わなかった」  京がピザを食べながら、興奮した様子で話す。 「ああ。俺もだ。健吾のMCと、正史郎さんの歌の力だな」  生ビールを呑みながら、俺も京に同意した。だがふと、京の顔がかげる。 「……なあ真一、俺たちホントにデビューするの?」 「もうデビューしただろ。ファンもついたし、ベストな滑り出しだな」  ますます曇る京のカオを覗きこんで、俺は気遣った。 「どうした?」 「何だか……真一が遠くに行っちゃうみたいで……」 「不安なのか?」  言葉尻を引き取ると、京が小さく頷いた。昨日のように、俺は京の乾ききらぬブラウンの髪に口付けた。 「お前も一緒だろ。置いていきやしねぇ、京も一緒だ。何も心配する事はねぇ」 「真一……」  それでもまだ不安の揺れる京の瞳に、俺は口付けた。閉じられた瞼ごしに、優しく舌で眼球を転がす。 「んん……」  くすぐったいような呻きが上がって、俺は焦らしながら徐々に唇を下げていった。額から、鼻筋、頬を通って唇へ。待ちかねたように京はふっくらとした唇を開いて俺の舌を受け入れた。歯列を丁寧になぞり、互いに吸っては絡ませ、やがて飲み込みきれない銀糸が、京の首筋を伝っていく。  それを追いかけるように舌を滑らせると、京が堪えきれない喘ぎを漏らした。 「やあっ……」  俺は、耳朶を口に含みながら喋る。言葉と共に、ぴちゃぴちゃと濡れた音が京を犯している筈だ。 「これくらいでギブか? 言っただろう。バンドが出来たら……」 「……あ」  京が、快感とは違う声を上げる。思い出したか。『バンドが出来たら溺れさせてくれ』。そう約束したのは、いつだったか。京はギター練習に懸命で、忘れてしまっていたのだろう。だが俺は、ライヴの高揚感を胸に刻み、しっかりと覚えていた。  怯えたように身を離そうとする京を、俺は抱き締め、感じやすい耳から首を徹底的に攻める。耳に舌を差し込み、首筋にしゃぶりついて強く吸い、甘く噛んでは京を泣かせる。  腰砕けに俺にもたれかかるしかない京のパジャマのボタンを、一つ一つ外していくと、あらわになった胸の小さな色づきを、人差し指と中指の腹で優しく擦った。すると、それはぷくりと膨らみ固くなった先端をピンク色に染める。 「あんっ……真一……!」  京は涙を溢しながら、腕の中で()がる。 「……じゃ……」  くぐもった息の下から、何事か伝えようと弱々しくもがく京に、俺は耳を澄ませた。 「ん?」 「……ここじゃ……や……」  切れ切れにようやく発された言葉に、俺は瞬間、唇の端で笑った。確かに。反応の良い京の身体に夢中になっていたが、初めてがソファの上では嫌だろう。 「ああ……悪かった」  華奢な京の身体を軽々と抱え上げると、セミダブルのベッドに運ぶ。いつか京が誉めてくれた、モノトーンで統一されたインテリアの一つだ。そこへ京をフワリと横たえると、俺はバスローブを脱ぎ去った。京のパジャマも脱がし、素裸で抱き合う。  京は、俺が初めての恋人だと言っていた。つまり、京の綻びかけている柔らかな蕾を摘み取るのは、俺が初めてだという事だ。  俺とひとつになれる(よろこ)びと、少しの不安と僅かな恐怖と。そんな感情がないまぜになって顔に出ている京を安心させる為に一つ軽く口付け、更に下へと俺は唇を下ろしていった。胸の新芽は、まだ触れていない方を舌で転がす。 「あ……ん」  男も感じるモンなんだな。京の不安を取り去ろうと、感じる箇所を探って幾らか冷静な頭で、そう思った。(へそ)に舌を入れ掻き回すと、反り返った京の花芯が顎に触れて、透明な蜜でそこを濡らした。  すでに京は痛いほど勃ち上がっている。これでは辛いだろうと、俺はすぐに京を口内に含んだ。 「あ、駄目ぇ……っ!」  頭を上下させると、京が叫んだ。 「出ちゃう、真一……!!」  逃れようとベッドをずり上がる京を追いかけ、俺は低く囁いた。 「良いぞ。一回抜かなきゃ辛いだろう」  根本まで一気に飲み込み、強く吸うと、呆気なく京は白蜜を溢した。 「あっ、やぁ、しんいっ……!!」  出しきるまで何度も吸い上げてやると、過ぎる快感に半狂乱になって京は悶えた。意識は飛びかけているのが表情で分かる。恍惚と蕩けているそのカオを見て、俺は今まで残っていた僅かな理性と手を切り、京に入る為の準備に取りかかった。  口内に溜まった白蜜を、京の蕾に塗り込むように舌を使う。膝裏に掌をかけ大きく足を開かせて、奥の方までぬめらせ、まだ三部咲きの蕾を花開かせようとする。京の手が俺の癖っ毛を掴んで、くしゃりと乱した。 「真一……! おかしく、なっちゃい、そ……」  裏返った声で訴えられては、俺も我慢の限界だった。片手を膝裏から外し、中指を蕾に忍ばせ、内部を探る。 「あ、んっ……そこ、駄目だったらっ!」  後は簡単だった。京が嫌がる方へと、指を移動させれば良かったからだ。口で嫌と言う度、身体は正直に収縮して俺を一点へと導く。固いしこりに指先が触れた途端、京がスプリングを軋ませてビクリと跳ねた。 「良い子だ……愛してる、京」  そこを擦るように抜き差しすると、もう京は悲鳴しか上げられないようだった。あられもなく足を広げ、言葉と腰の動きで強請る。 「ヒッ……! あ、真一……もっと……!」  花は充分に開いている。俺は指を抜き、ドクリドクリと脈打っている自身を京の蕾に宛がった。 「入るぞ……」 「あっ……痛た……っ!」  だが京が顔を歪め、シーツを強く掴んだ。見ると、京の蕾からは血が滲み、真っ白なシーツに(くれない)の染みを穿(うが)っていた。快感から苦痛の涙に様相を変え、痛いと訴える。俺が慌てて自身を引き抜くと、痛みに引きつっていた京の表情が、安堵に変わった。 「悪りぃ、京……急ぎ過ぎたな」  初めての性行為が、のちの性生活に与える影響は大きい。セックスが痛いものだという印象を植え付けては、京が不能になる可能性もあり、痛みに萎えた京の花芯を握ると、俺は再びそこに火を点けようと躍起になった。 「っあ、あっ……」 「一緒にイこうぜ……京」  横向きに向かい合い、二人分の中心を両掌で握り込み、緩急をつけて上下に扱く。幸いにも京は、すぐに勢いを取り戻した。 「真一……真一……」 「京……!」  うわ言のように何度も名前を呼ばれ、たったそれだけで俺はますます膨れ上がる。 「イくっ……!」 「あ、あー……っ!!」  俺と京は、同時に絶頂を向かえ、勢いよく白濁を飛び散らせた。  京はしゃくり上げ、俺は荒い息をついたまま、しばらく汗に光る額を合わせていた。顔色を窺うと、泣き濡れた瞳を閉じて、ぐったりと横たわっている。だがその表情は心地良い疲労に弛緩していて、苦痛は感じられず、俺は安心してそっと京を抱き寄せた。 「京……大丈夫か?」  瞳がうっすらと開いた。 「真一……ごめ……」 「謝るな。お前は悪くねぇ。俺が早まったんだ」 「でも……」  吐息がかかる距離で、囁かれた。 「俺も真一と、一つになりたかったから……」  最高の殺し文句だ。こんな状況にも関わらず、自身が再び熱をもつのを感じて、俺は少しだけ慌てた。 「俺もだ。でも、急ぐ必要はねぇ……シャワー先に浴びるか?」 「ううん……少し……休んでから……」  と残して、事切れるように京は眠りに落ちた。  俺はそうっとベッドを抜け出すと、京にまっさらなシーツをかけて、バスルームへ向かう。身体に灯った火はおさまる事なく、俺はバスルームで一回抜いた。これ以上、京に無理はさせられない。  身体に力の入らない京を抱き上げ再びバスルームに入って洗ってやり、この日は一つのベッドで抱き合って眠った。本当の意味で一つにはなれなかったが、それ以上に心が一つに溶け合った。 「おやすみ、真一……」 「ああ、おやすみ……京」  おやすみのキスを触れ合わせたまま、京と俺は眠りの淵に落ちていった。

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