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第56話 溺れる愛
※具体的な性描写があります。苦手な方は、読み飛ばしてください※
やがてアパートに着くと、俺はやけに大人しい助手席の京を覗き込んだ。すると、一日中緊張にさらされて疲れたのか、軽い寝息を立てていた。あどけないとも言える寝顔。思わずキスしようとしたが、シートベルトに阻まれる。勢いよくそれを外すと、跳ね上がった金具が内装に当たり、京は目を覚ましてしまった。残念。
「ん……ごめん、寝ちゃってた。着いた?」
「ああ。眠いなら、運んでやるぞ」
「え、良いよ」
京は、俺の冗談にも、律儀に頬を染める。俺たちはワンボックスカーを降り、二人で暮らす部屋へと戻った。
「京、風呂入ろうぜ」
「……あ!」
今更だが、京が気付く。顔を真っ赤にして、
「まさか、その為に帰ってきたんじゃ……!」
「その、まさかだ。武道館でライヴだぞ、我慢出来るかよ」
「真一……そう言えば、演奏中にキスもしたろ!」
「ああ。これからもするから、慣れろ」
「君って……」
説教が始まりそうな気配に、俺は京の口を封じてしまった。今度は、俺の唇で。この数週間で、京の『イイ』場所は全て知り尽くしている。上顎の奥を攻めると、むずがっていた京は、途端に甘えるような呻きを鼻に抜けさせた。
執拗に舌を絡め、滑らかな京の表面をなぞり、吸い上げる。二分もすれば、京はグッタリと体重を俺に預け、ついでに下着一枚になっていた。足元に蟠った黒いスーツから足を抜く為に、軽く持ち上げてソファに下ろす。
俺も手早く下着一枚になり、まだトロンとした瞳の京を抱き上げて、バスルームに連れて行った。そこで下着も取ってしまうと、京は微かに恥じらいを見せて太股を擦り合わせた。口付けだけで、京の分身はもう、弾けそうなほど脈打っていた。
「や……見ないで」
「今更だな、京。もうお前の身体は、奥の奥まで知ってる」
京も口では拒んだが、ライヴの高揚感に身体が反応していた。それを見て、俺もまた昂る。バスタブに湯を張りながら、溜まるのを待たずに京を抱えて中へ入る。向かい合ってバスタブに浸かると、互いのものが浅い湯の中でゆらゆらと揺れて触れ合い、背筋がヒヤリとするような快感をよんだ。
「京……一回出しとくか」
「えっ……あっ……!」
揺れる京を手に取ると、俺は緩く握って勢いよく扱いた。京が悲鳴を上げる。
「ひあっ……!」
あっという間に、湯の中に白い花が咲く。俺はそれを洗面器で掬い取り、洗い場に流した。肩を上下させて、京は汗の珠を身体中に光らせている。
「真一……!」
沸き上がる欲望に身体を持て余し、京は涙の滲む声で俺の肩に縋り付いてきた。その額にキスを落とし、俺はボディーソープを手に取って京の背中から引き締まった腰へと掌を滑らす。
「ぁんっ……!」
俺の身体に覆い被さるように膝をついている京の、分身と後孔にも洗いながら愛撫を施す。初めて試みた日には中指一本でもキツかったが、今は優に三本の指を京は受け入れて、それでも足りずに自ら腰を振っていた。
きゅっと目を瞑り、時々強請るように薄く目を開けて俺を見る京は、ひどく扇情的で俺を焦らせた。熱く膨れ上がって先走りを溢す俺はもう我慢がきかず、京の肩を甘噛みすると、その華奢な身体を軽々と抱き上げてバスルームからベッドへと直行する。
ベッドは二人分の水気を吸って湿ったが、そんな事には構っていられなかった。京の顔から首筋へと余す所なくキスを落としながら、吐精してもなお勃ちあがっている分身を握る。
「あんっ……! やっ……俺ばっかり……」
その可愛い苦情に、俺は片頬を上げた。
「京……痛かったら言えよ」
「ぅんっ……」
返事とも喘ぎとも取れる声音が返り、俺は京の蕾を探った。まだボディーソープの滑 りが残っていて、また容易く三本の指が飲み込まれる。中で指をバラバラと蠢かすと、京はもう自力で動く力もなく、ただハスキーに嬌声を上げた。
「イイか?」
普段なら羞恥を見せる質問にも、理性のとんだ京は、素直に陥落する。
「あ、イイっ……真一、もっとっ……」
「もっと、な」
俺は応えて、親指と人差し指で輪を作り、京の蕾をより拡げるように前立腺を掠めて輪を回す。
「ひぁっ、あ!」
その動きに、京は大きく声音を掠れ上げた。前から滴る愛液とボディーソープと腸液で、そこはぬちゃぬちゃと水音を立てている。
「やらしい音がするな、京……」
「んあっ、駄目、それ駄目っ……」
過ぎる快感に、京は大粒の涙を流して端正な顔を歪ませていた。本来白い身体は、湯に浸かったせいでなく、全身がピンク色に上気している。充分にそこを解すと、俺は京から快感のリングを引き抜いた。小さな悲鳴が上がる。
「京……」
俺は、ツンと尖った胸の色付きを悪戯に食む。すると京は、嫌々と僅かに首を振って嗚咽を漏らした。
「しんい、ち……早く……して……っ」
京の分身を見ると、また真っ赤に熟れている。俺は可愛く強請る京をもっと知りたくて、腰骨に柔らかく歯を立てながら、分身の下に実る二つの果実を片手で弄んだ。
「やぁっ……! 真一……!」
蕾への愛撫のお陰で、すっかり懐柔された京が叫ぶ。全身が性感帯になっているようだった。
隣が京の部屋で良かった、と思う。隣に住人が居たならば、ここまで開放的にはなれなかっただろう。
俺は京の腰を掴み、勢いをつけてうつ伏せにさせた。
「んっ?」
京が、驚きの声を上げる。
「京。尻上げろ」
「えっ……」
僅かに理性を取り戻した京が、戸惑ったような呻きを漏らした。
「バックからの方が、身体に負担がかからねぇ」
だが京の理性は、俺のリクエストに応えなかった。俺は強引に腕を京の腰にかけ、尻だけを高々と上げさせた。愛撫の名残に収縮する蕾が俺の雄と同じ高さにくる。その光景は、否が応でも俺を奮い起たせた。
「京、今度は痛くねぇからな」
この数週間、京の蕾を咲かせ続けてきた。全て、今夜の為だ。京の雌花に俺を宛がうと、徐々に軽く注挿しながら、じりじりと押し進む。
「あ……っ、ぁっ」
京が、快感と理性の狭間で揺れる。最初の夜の痛みを、身体が覚えているのだろう。俺は京の理性を飛ばすよう、萎えかけている分身を掴んだ。ゆっくりと扱いて、快感を引き出す。充分に花開いていたそこは、やがて俺を根元まで飲み込んだ。
「京……くっそ……イっちまいそうだ」
俺はグッと堪えて、京の尻に腰を擦り付けるように刺激する。
「ぁっ、あ、イイっ……」
挿入している間、苦鳴にも似た声を溢していた京だが、ついに息吹を吹き返して、確かにそう言った。
「京っ……動くぞ」
俺は堪らず抜き差しを始める。
「ア、アァッ……!」
京も高く嬌声を漏らした。初めて、心身共に一つになれた。その興奮が、一気に堰を切って、俺は京の尻を淫らに掻き回した。京はシーツをきつく握って、その衝動に堪えている。
「京、悦 過ぎだ、お前っ……」
京の中はきゅうきゅうにキツくて、しかも俺の動きに合わせて収縮する。抜く時は逃すまいと締まり、入る時は迎え入れて綻んだ。
「イくぞ……っ」
背中に覆い被さるようにして京の分身を握ると、京だってイキたくて堪らない筈なのに、大声で制された。
「やぁっ……!!」
「どうした? 痛いか?」
「ちが……」
「何だ」
腰を支えて緩く一度突くと、京の背が折れそうにしなった。感じているのは間違いない。
「真一……っ」
「ん?」
聞き逃しそうなほど、小さな声が紡がれた。
「これじゃ……真一の顔が見えない……」
思わず、頬が緩む。
「可愛い事、言いやがって……分かった」
わざと勢いよく引き抜くと、京が衝撃に堪えきれず鳴く。正面を向かせると、京のカオは泣き濡れひどく色香を漂わせていた。京の膝裏を両手で折って、俺は摩擦に紅く色付く京の中に、再び入る。今度は、何の苦もなくつるりと入った。
「キス……して……真一」
俺はそのオーダーに応えて、長身を折って京にそっと口付ける。そして離れるやいなや、分身を扱きながら激しく腰を律動させた。
「ァッ、アァッ、真一っ……!」
眼下には快感に揺れる京のカオ。頭の中にはあのメロディ。京の足の親指が、きゅっと反り返った。
「京、愛して、る……!」
「ぉれ、も……ッ!!」
俺たちは身も心も満たされ、半ば失神するように眠りに落ちた。寝入る寸前には、新しいメロディが、エロティックに頭の中で鳴っていた。
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