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第5話 浴衣

 近場で夏祭りをやっているのは知っていたが、特に興味もなく、はや最終日を迎えていた。引っ越してきたばかりで友達も少なく、一緒に行くあてもない。  唯一脳裏に浮かんだのは京だったが、引き際も肝心だ。しつこくしては逃げていってしまう。そう思って誘うのをやめた。  と、チャイムが鳴る。時刻は午後四時。宅配便だろうと、俺は誰何もせずにドアを開けた。 「……真一さん?」  ポカンと口を開けたままになった俺に、京は声をかけてきた。原因は、京が色っぽいとさえ言える浴衣を着ている事だった。深い藍色に、帯の色と揃いの緑の縦線が入っている。 「ああ、京。どうしたんだ、それ」  ようやく応ずると、恥ずかしそうに京がはにかんだ。 「ショーウィンドウに飾ってあって。衝動買いしちゃいました」 「よく似合ってる」 「ありがとう」  ますます照れて、京は頬を染めた。 「あの……もし良かったら、これからお祭り行きませんか」  まさか、京の方から誘ってくるとは思わなかった。これは、脈ありかもしれない。俺は祭りよりも、京と二人で過ごしたかった。 「祭りじゃなきゃ駄目か? 海、行かないか?」  祭りの大通りを越えて少し歩くと、海に出る。京は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに笑顔を見せた。 「うん」

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