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第7話 青天の霹靂
「真一さん」
陽が沈んだばかりでまだ仄明るく、濃い群青色に見える彼方の水平線を眺めながら、京は言った。
「あの……」
いつものハキハキした口調とは裏腹に、いやに歯切れが悪い。俺は隣から京の顔を覗き込んだ。
「どうした? それに、もう友達なんだから『さん』付けや敬語は良いぞ」
「えっ……」
「今からな。せーの、はいっ!」
パチンと一つ指を鳴らし、俺は、どういう反応をするかと京を見た。案の定、京は困り顔で見上げてくる。
「真一さ……」
「真一」
強い口調で言い聞かせると、困りながらも素直な京は従った。
「……真一」
「何だ」
「その……」
また言い淀む。俺は面倒臭くなって、京の肩を勢いよく叩いた。
「だーっ! 何だよ! お前らしくねぇ」
すると意を決したように、京はすっくと立ち上がった。
「真一さ……じゃない、真一!」
「おう」
やや面食らって答えると、京は勢いよく頭を下げ、一息にこう言った。
「好きです! 俺と付き合ってください!」
青天の霹靂だった。
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