15 / 57
第15話 翌朝
間近に京の眠るソファの上で、ようやくウトウトした時だった。目覚ましのアラームが鳴る。何度も悩ましい京の呻きに起こされ、額のタオルを変えてやった為、殆ど寝ていなかったがいつもよりスッキリと目覚め飛び起きた。
京をもっと寝かせてやりたくて素早くアラームを止めたが、眠りの浅かった京は、目を覚ましてしまったようだ。覗き込むと、まだハッキリしない頭で、俺をぼんやりと見つめてくる。
「京、大丈夫か?」
その表情をもっと見ていたくて、刺激しないように優しく囁く。
「しん……」
だが痛めた喉から声を出すのが辛いらしく、その顔がくしゃりと歪んだ。
「ああ、辛いなら喋るな。今、飯作ってやるから待ってろ」
消化の良いものをと、卵と野菜の雑炊を作る。その間に、京はまた少し微睡んでいたようだ。枕元のサイドテーブルに運んでいくと、閉じていた瞳を半眼に開けた。
「起きられるか?」
「うん……今、何時?」
「ああ、バイトなら今日も休めって言ってたぞ」
察して先回りをすると、京はホッとした表情を見せた。そして、掠れた声でまた俺を呼んだ。
「真一……ありがと」
まだ幾らか冷たい額のタオルを差して言う。
「ご飯まで」
サイドテーブルに置いたほかほかと湯気の上がる茶碗を見て、京は嬉しそうに短く単語を発した。そしてゆっくりと起き上がる。身を起こす事も出来なかった昨夜に比べると、随分と回復しているように見え、俺も嬉しかった。
「食わせてやろうか?」
「大丈夫。いただきます」
熱が引いたという事は、身体が風邪のウイルスと戦ったという事だ。よほど空腹だったのか、京はそれをあっという間に平らげた。
「美味しい。ご馳走様でした」
律儀に手を合わせる彼に、俺もちょっと笑いながら返す。
「お粗末様でした」
時計を見ると、バイトまでにまだ少し時間があった。熱々の雑炊を食べたせいで、京の額には再び汗が光っている。下心なく、自然と言葉が口をついた。
「汗、拭いてやろうか」
「えっ」
その京の反応で、彼が困惑しているのが分かった。照れているのだろう。
そうか。まだ俺たち、バードキスしかした事ないもんな……。思った事は顔に出るタイプだ。それを読み取って、京は自分が、俺の好意を下心と疑った事を恥じ、即答した。
「う、うん。お願い」
言うと、Tシャツの裾に手をかけた。
ともだちにシェアしよう!