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「ひっ…やっ」  男は牢の隙間から手を伸ばし蜜の足を掴んだ。そして牢の方に引き寄せた。蜜は檻にカラダをぶつけ、それ以上動くことが出来なくなっても、なお、強いチカラで牢に引き込むように引っ張られる。 「やっ…痛いっ、やっ…!!」  男は牢越しに蜜の腰を掴んで、引っ張りあげた。蜜は腰を高く上げさせられ、バランスを取ろうと足を伸ばす。すると、肩に重心が移り前のめりになり、地面に突っ伏した。 恐怖で逃げ出そうともがくけれど、腰をガッチリ掴まれて、逃げられない。  檻に尻が食い込むほど引き寄せられて、そこに男の腰が擦り付けられた。 「ヒッ…なにを…!」  蜜が振り向けば、男は口の端を上げて笑っている。蜜は額から汗が流れ落ちた。  左手で蜜の腰をガッチリ掴んだまま、右手で蜜の服を剥いでいく。  男と蜜の間にある檻が冷たく肌にあたる。 「あっ…はっ…あっあ…うゔ」  グチュグチュ。  暗い地下牢に響き渡る不快な水音と蜜の声。檻越しに打ち付けらるそれに、蜜は体を支えきれず不安定になる。男の腕が蜜の腰を離さないため、蜜は両手を地面につき、尻を高くあげた状態で、牢の向こうにいる男のモノを尻に咥えていた。 「暇つぶしには、ちょうどよい。…私にこんな扱いをさせた人間にどう報復してやろうか。考えている間、お前には相手をしてもらおう」  お前は私の世話係なんだろう?と男の冷たく言った。その声を聞きながら蜜は達した。    バッチュバッチュバッチュバッチュ 「あっあっあっ…っんぁ…あっあっ」    乱暴に刺し抜きを繰り返される。男は魔の物だ。人間のモノより長くて太い。蜜の小さな蕾はいまやだらしなく広がっていた。 「ひっ…や、やだ…あっあっあっあっ」  何度か中に射精され、白濁の液が穴から垂れる。 「あっあっ…んっあっ、やっ、あっ」  それ以上に蜜自身も達している。もう出すモノがないそこは切なく勃っている。 「あっあっ、や、もうやだっあっ…やだぁ」  男は笑う。 「先刻の無気力より幾分マシな顔になってきたな」 「や…だ、っあ、苦しっあっあっん」  蜜の苦しむ顔は男を興奮させる。下から突き上げるよう深く指す。もっともっと奥へ。  2人の間には檻があり、体が密着することはない。もどかしさを感じる。根元まで挿入たいのに挿入られない。男はそのイラつきを蜜にぶつける。刺して抜いて刺して抜いて。だんだん動きを小刻みに激しくする。殴るように腰を打ち付ける。 「あっぐ…ぅぐっぐ…あっあっ」  蜜はその激しさについていくのがやっとで、呼吸すらままならない。揺さぶられ、涙か溢れ、焦点も定まらない。  はやく、終わって。  苦しい。  苦しい。  いっそーーー殺してーーー    男の動きが今までにないくらい速くなり、そして、奥深く刺され、熱い液が注がれる。    ようやく解放された蜜は床に倒れ込み、痙攣を起こす。ピュッと尻の穴から白濁の液が漏れる。 「くっくっくっ、滑稽だ」  あれだけ激しかったのに男は息ひとつ乱れていない。それがさらに蜜を惨めにさせた。  床に倒れたまま蜜は言った。 「も、もう…殺して…」 「フッ、弱い生き物よ」 「おねがい…します…」  疲れた。僕は…とても疲れている。  早く休みたい。   「死にたい人間ほどつまらないモノはない。私の脅しが効かないからな。殺してやったら、私がお前の願いを叶えてしまうことになる。なぜ私がそんなことをしなくてはいけないのか。」  ハアハアハア、上がる息を整えるのに必死で、蜜は男の話が頭に入ってこない。 「お前…名は?」 「…っ」 「名前を聞いている!」  ガン!牢の隙間から足が伸びてきて蹴っ飛ばされる。 「ぐっ…。みつ…蜜と申します!」  叫ぶように答える。 「そうか。蜜。お前を殺さない。ただし生きた心地もしないように、私の側に置いてやろう。私の『お世話係』なんだろう?私に逆らえないよう調教してやろう。私がお前の主人になってやる。逃がしはしない。」 男は楽しそうに喋っている。朦朧とする意識の中で蜜は思った。    ーーーなんだ、今までの暮らしと大して変わらないな。    死にもしない。ただ生きるだけ。  構ってくれる分、この男の方が今のご主人よりまともに思えた。  蜜は疲れていた。もう考えたくなかった。  男の方を見やる。恐ろしいのに、その紅色の瞳だけは変わらず美しかった。  蜜が社を出た時、外はもう暗かった。社の外にいた大勢の人間はすでにおらず、みはりの男が1人立っているだけだった。 「ちっ、なんだ出てきたか。あんまり遅いんでもう化け物に喰われちまったのだと思ったよ。中で何をしていた?化け物はどうなった?」  乱暴に肩をど突かれて、蜜の体をはフラリと揺れる。蜜はボソリと呟く。 「もう喰われたよ…僕の新しいご主人に…」 「なんだ?」 「いえ…」  蜜は、にこりと笑って見せた。見張りの男は怪訝な顔をした。 「お前…それは…」  見張りの男が蜜が手にしている物に気付いた。お札だ。社のお札だ。 「剥がしたのか?何勝手なことをしてるんだ!」  ガツンと蜜の頭を殴る。勢いで倒れた蜜の顔はそれでも笑っていた。  見張りの男は薄気味悪く思った。蜜の後ろに紅の光りが見えてハッとする。 「うわあっ、ば、バケモ」  バシュッ。見張りの男の首が飛んだ。 「行くぞ、蜜。人間に復讐をする」 「はい、ご主人」    蜜は立ち上がり男の後をついて行った。  それでいいと思った。    今宵は新月。  闇は深い。

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