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第1話
「いらっしゃーい、良いのが入ってるよ」
威勢のいい声が市場のそこら中から聞こえる。今日は、週に1度の定期市の日だった。
町人も、百姓も、皆巻き込んで一つの場所に集まる。
「お、権六 !お前、遅かったじゃねぇか」
「!助 さん」
後ろからガシッと肩を組んできたのは、商人として付き合いのある助さんだった。
助さんは、俺みたいな若い商人は危なっかしくて見てられねぇよ、と何かと面倒を見てくれている。
「…本当、いつもすんません」
今日も、助さんの店の一角を借りて商売をやらせてもらう事になっていた。
今日仕入れた目玉の品物を真ん中に置き、品を並べていく。
「ちょっと、止めとけよ。あいつには近付くなって…」
「え?あの子って、もしかして…」
その時、店の前を歩く百姓の話している声が耳にはいった。
何気なく百姓の視線が向けられている方を見る。
……子ども?
そこにいたのは酷く肉付きの悪い少年だった。
「あらぁ、非人だな。」
「……ひ、にん」
隣からひょこっと顔を出した助さんが欠伸をしながら言う。
人じゃねぇやつらって事だ、と助さんは続けた。
…人じゃないやつら
俺は再び少年に視線を移す。
12、3歳だろうか。弱々しく動く手は枝のようで、所々傷がある肌は血色が悪かった。
でも、何より目を惹くのはその顔だった。げっそりとしているが端正な顔つきで、正直綺麗だと思った。
……あんなに、綺麗なのにな
俺は心にモヤモヤとした何かを抱えながら、仕事に取り掛かった。
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