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第2話
民家の間の細い小道。
つい先ほど店を閉めた俺は、赤い夕暮れに照されながら家路を辿っていた。
今日の品は半分程度が売れその売り上げは上々であった。
これは、儲けたぞ。
思わずニヤリと頬が緩む。
そんな浮き足立った様子で軽快にスキップをしていると、目の端に人影を捕らえた。
「あれは……さっきの子ども…?」
道の隅で倒れている人影は、先ほど非人と呼ばれていた少年だった。
急いで駆け寄る。
「お、おい!あんた、大丈夫か?」
ゆっくり体をおこす少年。しかし、その動きは弱々しかった。
バランスを崩しまた地面へ手をつく。
「…とりあえず、これ飲めよ」
その場に座らせ、竹の水飲みを差し出す。
少年はそれを勢いよく奪い取るとごくごくと飲んだ。
「いい飲みっぷりだな、あんた名は何て?」
「……マツ」
マツ?女みてぇだな。まぁ、顔つきもだけど…
俺はマツの顔を覗きこむ。
クリリとした目と目が合い、マツは一瞬驚いた後目を反らした。
「…っ……や、やめて」
べしっと顔にマツの手が当てられる。そのまま押し返されるが、その力は弱く抵抗にはなっていなかった。
「お、俺は……きたない、から」
震える声で述べられた言葉に驚く。
細い腕を掴みそっと手を退けると、大きい目に名一杯の涙をためるマツの顔が見えた。その表情からは、悔しいと嘆く中にどこか諦めているものを感じる。
この時、俺は確信を持った。
こいつは、こうやって周りからも、自分からも、虐げられて生きているんだな…と
だから俺はある提案をしようと思う。
「俺と……交渉しないか?マツ」
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