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第5話
「あ!ん……んァ……!!」
「凄い声だな。いいのか?隣に聞こえるぞ」
体が変だ……
「き……霧雨さ……ま……ぅ!……アァッ!」
声が抑えられない…………!
「琥珀……顔を隠さないで」
情交はいつも苦痛だった
本来は使われるべきではない場所
痛みで気を失ったのは一度や二度ではない
内蔵を押し上げるような圧迫感
痛くて苦しくて、
行為が終わるのを必死に耐えて待つ
苦痛を我慢するのに精一杯で、
自分の快楽はない
でも、その行為で代をもらっているんだ
何かを望むことなんてなかったし、
痛くて当たり前……
なのに
「霧雨……さま……俺っ!んんッ!!
す、すみませ……ァ……私ばかり……!」
気持ちいい……
…………変になりそう
「『俺』でいいよ。
中、絡みついてくる……」
掠れる声
耳元で囁かれる
「あ……!ぁっ!霧雨……さま……!」
「琥珀。あまり色っぽい声を出さないで。
理性が保ちそうにない」
俺を見つめる目は欲情の色が濃く、
足を開かされ、奥へ奥へと打ち付ける
出し入れは激しいのに痛くない
それよりも……
「ぅ……!あァアッ!」
「可愛い……琥珀……」
裏腹に触れる手は大切なものに
触るみたいに優しかった
何度も口づけされ、手を握り、
時折、髪や頬を撫でられる
その夜
数えきれない程、抱かれた
…………朝だ
昨夜は意識を保てず、落ちてしまった
…………あんな客、初めてだ
男娼に優しくするの必要などないのに……
……体がだるい
その時、扉が開いた
「起きたか。琥珀。
昨夜は無理させて悪かったな。
つい、お前が可愛くて……
今、食事を頼んできた。一緒に食べよう」
目が点になる
時間は戌の刻までだったはず……
何故、朝まで……
しかも一緒に食事……?
混乱していると、食事が運ばれてきた
二人分……
眠ってる俺なんて放っておいて帰れば、
余分な代金を払う事もなかったのに
「これ、旨いぞ。早く、琥珀も食べろ」
「はい……いただきます……」
最近は忙しくて飛翔とも時間が合わず、
誰かと食事をするのは久しぶりだな……
他愛のない話をしながら食事をするのは、
不思議な感覚だった
「俺は仕事だから、そろそろ行かないと。
子の刻まで代を払ってあるから、
今日はゆっくりしてくれ」
夜中まで?
一日分だと相当な金額……
「……頂けません」
「もう支払いは済んでる。無理させたんだ。
たまには休んでも良いだろう?」
「お気遣いありがとうございます……」
なんだか申し訳ない気持ちになって
下を向くと霧雨さまが頭を撫でてきた
「また琥珀に会いに来るよ」
「お待ちしております……」
その言葉通り、霧雨さまは
3日に一度は足を運んでくださった
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