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第6話
頭が痛い……
「琥珀。熱か?」
飛翔が心配そうに声をかけてきた
流石、5年一緒にいるだけある
主様も客も誰も気が付かなかったのに
「分かるか?」
「顔がほんの少し、赤いから……
それに辛そうだ……」
「大した熱じゃない」
「無理するなよ」
「ありがとう。飛翔」
今日は多分、霧雨さまがいらっしゃる日
「琥珀。霧雨さまだ。椿の間にお通しした」
「はい!すぐに参ります」
不思議と足取りが軽くなる
いつも優しく自分を大切に抱いてくださる人
いつしか
俺は霧雨さまとの逢瀬を
楽しみにするようになっていた
「失礼致します。琥珀でございます」
部屋に入ると、
すぐに霧雨さまの顔色が変わった
「琥珀?顔が赤いぞ?
熱があるんじゃないか?」
こんなに……すぐに気付かれるとは……
「い、いえ……大丈夫です!」
急に頭を触られる
「熱だよ。今日は寝てないと……」
「大丈夫です!大した事はございません」
そんな……楽しみにしていたのに……
帰らないで欲しい
…………あと少しだけ話したい
「駄目だよ。寝なさい」
「…………」
「琥珀」
「……そう……ですね。
移したらいけませんし、
今宵は残念ですが……
せっかく来てくださったのに、
本当に申し訳ございません。
お代はそのままお返し致します。
…………また、来て下さいますか?」
残念だったな……
「そんな寂しそうな顔をしないで」
「え……?」
しまった……
俺、どんな顔をしてた……?
「琥珀が大丈夫なら、ここに居てもいい?
俺が看病してあげるよ」
「…………は?
め、滅相もございません!
お帰り下さいませ」
情交を出来無いのであれば、
この場にいる意味はない
「つれない事を言うなよ。琥珀。
今宵はお前と少しだけ話をしたいんだ。
眠くなったら寝てしまっても構わないから」
…………霧雨さまも?
呆然としてると、
霧雨さまは俺を布団に寝かせ、
濡らした布を頭に当てた
「霧雨さま!もう十分でございます。
そんな事なさらないでください!」
客に何をさせてるんだ
起き上がろうとしたら、肩を押えられた
「お前は頑張り過ぎなんだ。
熱の時位、休め」
「……霧雨さま」
頬を撫でられる
「病の時は心細いだろ。
ずっと側にいるから……」
「うつしてしまったら……」
「そんなに柔 ではないよ」
この扱いはなんなんだ
今まで熱を出しても不調があったとしても
誰も看病などしてくれなかった
手が……温かい…………
不意に目頭が熱くなる
「……琥珀?」
頬に涙が伝う
……え
涙…………?
…………俺……泣いてるのか…………?
自分の涙に驚く
「も……申し訳……ございません……
気が緩んでしまって……」
泣いたのなんて何年ぶりだろう
「お前はしっかりして見えるけど、
18だものな。
ゆっくりと休んで、早く治せ」
その晩
霧雨さまは本当にずっと側にいてくれた
時々話をしたり、頭の布を替えたり、
俺の為にわざわざ、粥を頼み、
食べさせてくれた
霧雨さまの手は温かくて、
俺を見つめる目が優しくて戸惑ってしまう
言葉に言い表せない気持ちを
抱えたまま……
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