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第70話

七瀬『もう被害者面はやめてね?』 もう話を終わりにしようとするとボソリと呟いた。 八尋『俺、本気で穂波ちゃん狙おっかな…。』   真剣な顔でいってきた。 思わず固まると、誰かが扉を開ける。 ガチャッ 紅華『それは無理だな。 そいつ、兎だからお前には捕まえられねぇよ。』 七瀬『会長???』 八尋『俺、本気で捕まえに行くよ?』 風月『取り合いの最中に悪いけど、取り敢えずまとめるよ。 今回は林道が悪いけど、それにのって手を出したその子達にも否があるから、注意で済ますから。』 親衛隊の子達が注意で済んで良かった…。 陽『勝手に疑って殴り襲った新武は、一発殴られろ。』  紅華『兎は繊細だ。』 2人してすごい形相で新武さんを睨む。 七瀬『会長は馬鹿にしてるのかなぁ? 僕は気にしてないし、分かってて行ったから〜。』 何時もの間延びした声で返すと新武さんが余計なことを言った。 新武『いや、お前悪いやつやないし 警告だってしてくれはったから。 それに、なにか思い出させちゃったみたいやし…』 新武に近寄り、新武にしか聞こえない大きさで話す。 七瀬『それは死ぬ気で忘れてっていったでしょう?そんなに殴られたいなら喜んで殴りますが、 今は加減が出来ないので骨が折れるかもしれません。それでもいいのなら…』 せっかく誤魔化してるんだから余計な事を言わないで欲しい。 新武『いや…ゴメンナサイ…』 顔を引き攣らせ、謝ってくる新武さん。 七瀬『なら、告白してください。』 新武『はっ?』 どうやら僕が言ったことが理解出来ていないようで。 七瀬『三雲に。好きなんでしょう?』 三雲と聞くと仄かに顔を赤くさせる。 新武『まぁ、もうそろそろと思うとったし…』 七瀬『そうですか。 なら、二人で抜けてください。』 新武『わかった…なぁ三雲、少しついてきてくれへんか?』 三雲『ん?いいよ。』 そのまま二人で歩いて行った。 親衛隊の子二人が駆け寄ってきて。 親衛隊➀『隊長…助かりました!』 親衛隊➁『ありがとうございます!』 七瀬『ううん。当たり前のことをしただけだから。皆、ごめんね?僕は部屋に戻るよ。』 紅華『どうかしたのか?』 七瀬『いや、疲れたから〜。』 勿論、これは嘘。 思い出したから、忘れようと頑張ったけどもう無理だ。 怖い。   たくさん殴られたりもした。 震えが止まらない。 早くここを離れなくては…と考えていると会長が僕の顔を覗き込んだ。 紅華『俺の部屋、来るか?』 七瀬『えっ?』 紅華『いや、辛そうだし。 一人は嫌なんじゃねぇかなと。』 本来なら行くべきじゃないんだろうけれど、自然と口から出ていた。 七瀬『…"遊びに"行かせてもらいますね!』 紅華『まだ化け続けるか…』 七瀬『化けてませんよ。』 会長は何者なんだろう。 僕に話しかけたりして何がしたいのだろう。 優しい。 その優しさは辛い。 頼ってしまいそうだから。

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