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第68話 イケナイ
風呂から出て一階のリビングへ向かうと、制服からTシャツとスエットに着替えた埜が朝飯の準備をしてくれていた。
斎さんお手製の鶏団子スープとおにぎりだ。その他に昨日買って置いてくれたゼリーやヨーグルトなどもテーブルに出してあって至れり尽くせり。
「……なんか準備してくれて、ありがとう。はぁ……いい匂い。いただきまーす」
「しっかり食え」
こんなに食えるか?と思ったけど、思いのほか食欲があってペロリと平らげてしまった。
斎さんのご飯美味しすぎなんだ!
「前から思ってたけど、中って身体の割に以外と食うよな……」
「……そう?」
テーブルに肘を付きながら、俺の傍らで食べる姿を眺めていた埜が呆れたように呟いた。
うーん……あまり自分では気にしてないからよく分からないけど……食べるのは好きだ。
そんな俺の食欲よりも、隣に座っている埜のことが気になって仕方がない。
椅子を俺の方に向かせて座っているし、しかも近い。
近いので食べづらいし見られてるしで謎のプレッシャーが襲ってきて正直居心地が悪いのだ。
「食ったか?」
「……ん、食ったよ」
「じゃぁ触っていいよな」
「……さ、さっきから触ってんじゃん!」
そう……埜は俺がモグモグとご飯に夢中になっている間、ずっとどこかしら俺の身体を触っているのだ。
太ももや腰、背中や手が届く範囲で俺の身体をやわやわと撫で続けていた。
……食べづらいことこの上なし!
「あ?別にいいだろ。俺が触りたいっつてんだから」
椅子をこちらにギリギリに寄せてきて近い埜が更に近くなる。
スルリとシャツのなかに手を滑り込ませ、俺の胸を触ってきた。
「ちょ!ななんでそんなとこ!触ってどうすんだよ……」
「まぁまぁいいじゃん」
ニヤニヤしながらお構いなしに胸を触ってくるので、食べ終えた食器片付けも出来ない。
薄っぺらい胸を触って何が楽しいのかと思いつつも、埜に触ってもらうのはイヤじゃないな……
でもここリビングだし、ダイニングテーブルでなにやってんだよ……
親がいない時間とはいえ、兄弟でこんなことしていていいのだろうか。
「……なんか俺たちとってもイケナイことしてんじゃ……」
「だったらどうなんだよ。イケナイことしちゃダメなんて……」
「あ!」
「してくれてオッケーって言ってる気がする」
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