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第1話
「うるさいな……」
穏やかな寝顔の眉間に皺が徐々に寄り、晴 を不機嫌な表情に変えさせたのは、耳元で聞こえる不愉快な音のせいだ。
「うっさいな……」
寝言のように文句を垂れて寝返りを打つと、シン…と部屋が静まり返った。
「……ハッ!!ヤバイ!今何時?!」
晴は慌てて布団を剥いで飛び起き、目覚まし時計を確認すると六時を過ぎる頃だった。
「クソっ、寝坊した」
寝癖の酷い髪を掻きむしってそっと布団から抜け出す。
「もうちょっと寝てていからなあ~」
直ぐ横でスヤスヤと眠る子供に声を掛けて寝室から出た。
まず洗面所に向かい顔を洗う。さっぱりしたところで洗濯機を回して晴は身なりを整える。掌に取ったヘアワックスで適当に寝癖を直し、キッチンに行くと昨夜さぼった皿洗いをはじめた。
「朝飯…朝飯…バナナとヨーグルトでいいか」
カチャカチャと皿洗いをしながら辺りを見回し簡単に済ませられる朝食を考える。
皿洗いが終わったら次は取り込んだままで干しっぱなしの洗濯物だ。
ピンチハンガー一つと数個のハンガーがあれば足りる量の洗濯物をさっと畳んで、洗濯機が回り終わるまでの少しの間にコーヒーを飲むのが晴の習慣になっていた。
熱々のコーヒーを少しずつすすり飲んでいれば洗濯機からアラームが聞こえて終わったのを教えてくれる。
バスタオル二枚にフェイスタオル、下着にティーシャツに子供服、全部洗濯バサミに挟んでベランダに出す。
7時前、テレビをつけて天気予報を確認していると、寝室から泣き声が聞こえた。
晴は小走りに寝室に向かいドアを開ける。
「うわあ~ん!」
「奏多 起きたかー?」
奏多は1歳半になる男の子だ。
晴の姿を見つけた奏多は手をのばして抱っこをせがんでいる。
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