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第4話

家を出て、いつも通りの街並みをそそくさと抜ける。 30分ほど行ったら先程よりも人気のない通りに出る。 そしてまたそこを20分ほど歩き、空き家となった店の角を曲がれば 『営業中』 とだけ書かれた古臭い看板。 外観はそれなりなのに傍から見たら怪しすぎる店だ。 「おじゃましまーす…」 小声で店内に足を踏み入れる。 「誰もいない?」 あたりを見回しても人影はない。 あるのはほんの僅かな商品しか入っていない棚や机だけだ。 「あの!葉月です!!」 無音。 本当に聞こえるのかと思うくらい物音がしない。 渾身の力を込めて叫んだ 「榊(サカキ)さーん!!!!!葉月です!!!!」 思わぬところで気力を使い疲れてしまった。 もう帰ろうと思った時、店内の暖簾(ノレン)を除けながら彼はやってきた。 「アホみたいな声出さなくても聞こえてるわ!アホ!」 相変わらずの毒舌に苦笑いがこぼれる。 「お久しぶりです」 彼、榊宗佑(サカキ ソウスケ)さんは昔からの馴染みで今はΩ専門店を営んでいる。 藤堂家に引き取られてから使用人と初めてここを訪れ、彼に会った。 その時は軽く説明を受けただけだったが、あまり藤堂家と馴染めていない俺は暇があればここに来ていた。 彼は面倒くさがっていたが、幼い俺はそれなりの優しさを感じていた。 だが、ここ数年間は抑制剤等の入手の為以外には訪れていない。 「で?また抑制剤欲しいの?」 頭を掻きながらそう聞いてきた。 「切れかかってて」 震え混じりの声。 少しの沈黙のあと、榊さんは口を開いた。 「お前が一般のΩより発情期が多いのは知ってる。だがこの使い方は異常だ」 反射的に唾を飲んでしまい、ゴクッと喉がなった 「壊れるぞ」 たった一言の重みは俺には計り知れないものだった。

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