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第6話
榊さんの母親、榊つぐみさんは俗に言う娼婦だった。
Ωが社会的に優遇されない時代だから当たり前といえば当たり前の職業。
榊さんはつぐみさんと客の間に生まれた子どもらしい。
辛いだろうと思ったのだが、˹ よくある話だろ ˼とだけで淡々としていた。
せわしい日々の中で、つぐみさんは客の一人と結婚。
いい人だったそうで、僅かな間だったが俺も愛してくれたと榊さんは言っていた。
僅かな間というのも彼は結婚して数ヶ月後に事故で亡くなってしまったらしいのだ。
それからというものつぐみさんはすっぽりと穴が空いた状態だったという。
そしてある日、発情期が突然襲い、彼女は何人かのαに性的接触をされた。
それを機会に彼女は毎日毎日抑制剤を打っていたという。
榊さんは止めようとしたがそんな状態ではなく、ただ世話をすることしかできなかったと言っていた。
そしてある日外出先から榊さんが帰ってくるとつぐみさんは倒れていた。辺りに大量の空の注射器を転がして。
医者へ連れていった時はもう手遅れだったという。
そして榊さんは二度と過ちを侵さないようにと、Ω専門店を開き、母親と同じΩを支えることを決意した。
俺が知っているのはここまでだ。
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