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違和感 side龍空
吊の言葉をずっと考えた。
放っておけない、てーのはどういう意味なんだろうって。
ふとそう思ったところで通知音。吊から返信が来たらしいけど、まあそう言う気分じゃ無いので未読スルー。
あー、でも吊は今、何してるんだろう。零音は買い出しだけど、吊は暇なのかな。俺に返事してくれるってのは暇潰しなのかな。
ふう、と溜息を吐いて前髪を掻き上げる。
「うーん……」
予定変更。聞いてみよう。うだうだ推測するのは俺の得意分野じゃ無い。
アプリをもう一度開いて、言葉を選ぶ。……勘ではあるけど、下手な聞き方すると答えてくれないような気がして。
如何してそう思ったのかは俺自身解らない。でも俺のこう言う勘は良く当たる。信用しても良い勘だ。
【吊、そういや今何してる?
俺は同級生の家で休ませて貰ってる】
……結局書けたのは、そんな世間話みたいな聞き方。でもこれで良い。
警戒されるような文面じゃ無いはずだし、吊だって俺に悪意が無いのは解るだろう。そう言う書き方をしたから。
既読が付く。
数十秒の沈黙の後、多分返信が来る。そう思っていた。
なのに、返信は中々来なかった。
俺は首を捻る。そんなに警戒されているのだろうか。それとも、吊は暇な時間が終わったのだろうか。喧嘩? それとも何か別のこと?
もう数分待つ。
……やっと通知が来た。
【いいことだ。俺は今バイトをしている。】
ば、バイト?
俺は更に首を捻った。
確かにバイト中だって携帯はいじれる。職種にも依るけど、お客さんの来る合間合間に文字を打つことは出来る。
……でも、何だか俺には想像が付かなかった。
何でだろう、噂のせいだろうか?
彼に関しては好感を持ってるし、あの噂は鵜呑みにしているわけじゃない。でも、何となく吊の言葉が嘘臭いと思った。
タイミングの問題、かも知れないし書き方の問題かもしれない。あ、そうか……句点だ。
俺はさっきまでの会話を見てみる。
全てに句点が付けられている。合間を縫って文字を打つのは手間だ。だから違う。吊は多分嘘を吐いてる。
【俺とこうして話してるのは駄目なんじゃ無いの?】
だから尋ねた。
これにどう答えるか。多分、それで吊が何を考えているのか解ると思う。多分だけど。
【俺は構わない。だからそれで良い。】
……よく解らない返事だ。
この文面だけを見ると随分自己中心的にも見えるし、でも昨日の吊を見てるから違うというのもよく解る。
……何を信じれば良いんだろう。
【ありがとね】
【どう致しまして。】
俺は吊からのその返事を確認すると、違和感の原因を探るためにケータイを閉じた。
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